約 3,137,072 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5220.html
静寂。それからは何故だかよく分からないが心の平安を与えられる様な気がしないだろうか? …決して頭のネジが捩曲がった上にぶっ飛んでしまって空いた穴に石油が溜まってしまったからこんな訳の分からん事を言っているのではない。 元来、スローライフやらなんやらに対して少なからず憧れを抱いていた俺だからこそ感じれる感覚なんだよ。 だからそんな俺にとって今隣で置物以上に置物っぽく座っている番の片割れはまさしくベストパートナーと言うに相応しいんだな。 長門有希。なんたらこうたらうんたら体がハルヒの唐変木な力を調査するために生み出したなんちゃらフェース。 なんていうものは過去の認識であり、今は多少人間には出来ない事が出来たり、多少普通の人間とは違った習性を持ってはいるものの今そんなインターなんちゃらなんて風に読んだら人権擁護団体が騒がしくなってもな不思議ではない位、人間らしくなっている。 そして何より俺とは 「…………」 いきなり手をギュッと握ってきたりしても俺の頭の中では素数が行進を始めたりはしないような間柄になった。 「いきなりどうしたんだ?」 「…………」 以前にも増して近しい間柄になったとはいえ未だに長門が何を考えているのが解らないときはある。 まあ、いくらなんでも相手の考えていることが全て解るっていうのは精神衛生上良くない。 が、自分の恋人が一日中普段とは違う雰囲気をまとっていたら精神衛生なんてどうでもよくなるもんである。 「朝から様子が変だったが…何かあったのか」 「…………」 俺の問い掛けに対しすぐに返事をよこすようならしくない真似はしない。 だから俺自身も深く追究するような野暮ったい真似はしない。 まあ、その代わりと言っちゃあ何だが繋いだ手を少し強く握りしめてやるのが俺のかつとめだろうよ。 そうする事数分。 俺の繋いだ手が空気を読めずに汗ばみだした頃、長門は口を開いた。 「…今朝、悪い夢を見た」 「夢?」 「そう、私は今まで夢について本やその他諸々から得られた情報によりある程度の知識はあった。しかし、実際にそれを見た事は今まで無かった…正確にはそのような機能は有していなかった」 始めて見た夢が悪夢か… 俺自身初めての夢がそんなの風だったら軽いトラウマになるだろうな。 「私は夢を見るという体験をするため私自身に対しそれを見れるような情報操作を施した。…私自身夢に対して理想を抱いていた事は事実。しかしこれまでの経験上その理想が打ち破られるのも想定していた。…しかし、今朝のそれはあまりにも酷かった………」 長門は一呼吸置き、そして呟いた。 聞き取れた俺は勲章を貰えるんじゃないかという位小さな呟きを。 「………それは貴方が奪われる夢」 「奪われる?俺が?誰に?」 「そう。一体誰が貴方を奪ったのか解らない。私の記憶にはない者だった」 なんともあやふやだなおい。 らしくないぜ全く。 「…貴方はずっと私の傍にいてくれると約束してくれた。それを疑うつもり微塵もない。ただ…」 「ただ?」 「もう一度約束して欲しい」 「……嫌だと言ったら?」 「…………」 そんなこの世の終わりどころかあの世の終わりみたいな顔するなよ。 余計にいじめた…ゲフンゲフン 「嘘だよ。お前さんが望むなら何度でも言ってやるさ」 「………本当に?」 不安げに俺を見つめるな、可愛すぎるだろ全く… やれやれ、何時から俺はサディストになったっていうんだ? 「ああ本当だ。耳の穴かっぽじって聞けよ」 長門が普段より深く頷いたのを確認し俺は 「 」 この世のものともあの世のものとも言いがたいほど臭いセリフ再びを吐いた。
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/30122.html
登録日:2014/10/11 Sat 15 42 06 更新日:2024/04/05 Fri 13 58 12 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 MNB しずまよしのり ビッグ7 佐倉綾音 戦艦 艦これ 艦娘 艦隊これくしょん 連合艦隊旗艦 長門 長門型戦艦 陸奥 陸奥になるビーム ビッグ7の力、侮るなよ。 この項目では『艦隊これくしょん -艦これ-』における長門型戦艦について記述する。 史実での詳細などは長門型戦艦へどうぞ。 概要 旧日本軍の戦艦である、長門型戦艦をモデルにした艦娘。 太平洋戦争前のワシントン海軍軍縮条約下では、ビッグ7と呼ばれる世界に名だたる戦艦であった。 姉の長門と、妹の陸奥の二人がいる。史実でも、どちらも戦時中非常に人気の高かった戦艦。 絵師はしずまよしのり、声優は佐倉綾音。 図鑑では姉妹で堂々のNo.001とNo.002を飾っている。 初期実装艦としては最大最強だったのである。 ゲームでの性能 艦種は戦艦。 レアリティがSホロと高く、初心者提督にはなかなかお目にかかれないが、その分他の戦艦以上のスペックを持つ。 金剛型・伊勢型・扶桑型は、高速だったり航空戦艦故の独自運用が可能だが、長門型はこれらより全体的にステータスが高い。 ただし、その分出撃や入渠でさらに他戦艦よりももっと資源をバカ食いすることになる。 金剛型戦艦や扶桑型は改二が実装されたことで長門型に迫るステータスを得て、 一部ステータスでは抜かされることもあるが、耐久面や対空など総合値ではこちらの方が上。 後に出た大和型にはさすがに能力が劣るが、そちらは大型艦建造でごく稀にしか出ない上、 資源消費量も別格、と運用のハードルが非常に高い。長門型の燃費もあまり良いとは言えないが、大和型に比べればかわいいもの。 入手難度は、長門型なら一部ドロップや通常建造でも出る上、大型艦建造ならもっと出やすい。 中級者以上なら、十分に艦隊の主力となってくれる存在である。 また、アップデートで艦型にあった主砲にすると微妙に命中率が上がる(逆に合っていないと命中率が下がる)フィット補正が追加されると、 46cm三連装砲の搭載にはリスクが生じるものの、41cm口径砲をフィット補正ありで使える艦型となり、火力面において有用性が若干上がった。 逆に、46cm砲をさらに上回る試製51cm連装砲が、後にイベント海域クリア報酬でもらえるようになったのだが、長門型改はこれを積める数少ない艦型(他には大和型しか装備不可)に選ばれ、命中を犠牲にロマン火力を取ることも可能に。 (最も命中低下は-1なので、46cm三連装砲や入手が限定的なネジ、多量の資源は使うものの改善は可能である) 『火力や装甲が高い戦艦が欲しい、でも大和型は使いたくない(使えない)』というそこの提督は、鎮守府にいるならば長門型を運用してみてはどうだろう。ビッグ7は伊達じゃない! 2017春イベント終了と同時に長門の改二が実装された。 大和型に準じる性能に加えて駆逐艦用の対空砲や上陸用船艇を運用できる能力を備え、艦隊防空から陸上攻撃まで対応できる汎用決戦兵器となった。 それと引き換えに燃費が大幅に悪化し、他の戦艦の実装で相対的に得ていた「そこそこの燃費でそれなりに強力な戦艦」という特性は失われている。 キャラクターとしての長門型 長門 私が、戦艦長門だ。よろしく頼むぞ。 敵戦艦との殴り合いなら任せておけ。 ネームシップであり姉の長門型一番艦。 ビッグ7であることと連合艦隊旗艦の自負を持つ、武人然としたキャラ。 母港では柔らかな声だが、出撃すれば凛々しい声と共に敵艦隊を吹き飛ばしてくれる。 また面倒見がいいらしく、2014年夏に期間限定で解禁された「砂場」家具で第六駆逐隊と遊んでいる事が示唆されている。 服の上からでも分かる大きな胸と、ミニスカートに露出の多い服から覗く、割れた腹筋が魅力的。 対魔忍とか言うなよ! ガイナ立ちが非常によく似合う艦娘で、アーケード版でも腕組みをしながら照準をつけている。 終戦時まで生き残っていたからか、運は通常で20、改で32と高め。 まぁ戦艦なのでだいたい連撃安定になってしまうため、夜戦カットインはあまり発揮されないが。 大和型ほどではないにせよ、入手はそこそこ困難。 ドロップは基本的に後半海域のボスドロップ限定だし、建造では他戦艦や姉妹艦の陸奥よりも出にくい。 建造時間5時間が出たら期待しよう。 アオシマから発売されている艦これウォーターラインシリーズでは、大正時代に改装された屈曲煙突をもった すこし昔の長門、通称「ヤング長門」も描き下ろされている。こちらは髪型がセミロングで、顔つきも少しだけ幼い。 2017年5月22日のアップデートで改二が実装。同時に時報も追加された。しずま艦初の改二であり、あやねる艦初の時報である。 また、同時に長門をイメージしたと思われる新BGM「連合艦隊旗艦」も実装された。 二連装砲と三連装砲を混載した艤装に黒いコートを羽織り、より凛々しく格好良くなった。 陸奥変体案や加賀型戦艦、金剛代艦型など実現しなかった改長門型戦艦の建造プランのエッセンスを取り入れたif改装。 さらに終戦後に捕鯨船に転用する候補として挙げられた点も取り入れられていると推測されており、そのためか大発動艇などの上陸用船艇を運用できる。 ここまでマシマシな強化が施されながら、大本営からは「地味な改装」と評されている。どこがだ ちなみに、中破した姿は見事なまでに「くっ殺」。 アップデートで昼間特殊攻撃が実装された。 ◆一斉射かッ…胸が熱いな! 所持艦:長門改二 発動条件:陣形選択時、梯形陣or第二警戒航行序列を選択+二番艦に戦艦を配置 発動タイミング:自身の砲撃時 発動確率:五割程度? デメリット:弾薬消費1.5倍 Nelson Touchと違って昼戦だと発動条件の梯形陣の火力低下が痛い。弾薬消費もダメージを優先する場合は中々堪える。 その代わり夜戦では火力低下が無くなるため、道中夜戦で相手を蹴散らす時に使うことになるか。 最大限活かせるのは連合艦隊の時とされている、そこそこの火力が出る第二警戒航行序列で使えるというのが利点。 陸奥改二と組み合わせると最大火力が出るので、やるならこの2人をペアで。 ビッグ7つながりか、Nelsonと組み合わせてもボーナスが入る。 陸奥 長門型戦艦2番艦の陸奥よ。よろしくね。 あまり火遊びはしないでね…お願いよ。 長門の妹、長門型戦艦の二番艦。 「あらあら」が口癖の大人のお姉さん。「妹なのにお姉さんキャラ」とそのギャップに驚いた提督もいたとか。 柔らかな物腰で尽くしてくれる上、「火遊びはやめて」なんて言うものだからたまらない。 長門が黒髪ロングに対して陸奥は茶髪ショート。こちらも胸は大きい。 姉の長門に比べ、史実では戦時中に停泊していた時第三砲塔が突如爆発し、それが原因で沈没してしまった(*1)からか、運の値が非常に低い。 その数値は通常で3、改でも5と、不幸が口癖の扶桑型姉妹などよりもさらに低い。 アップデートで微妙に向上したが、それでも改で6。ほとんど変わっていない。 彼女よりも運が低いのは最新鋭艦なのに初陣で沈んでしまった空母大鳳くらいのものである。 しかし運以外のステータスは長門と同等。夜戦でも連撃装備にすれば良いので、実質的な運用上はほとんど問題にはならない。 なお、セリフで爆発に対してよく気を使っている(「火遊び」もそのため)が、ゲーム中ではいきなり爆発したりはしないのでご安心を。 しかし砲撃中に「第三砲塔、なにしてるの?」とか言われると爆発しないと思っていても慣れないうちは心臓が跳ねる。 レアリティは長門と同じだが、ドロップ・建造共に長門よりは割と出やすい。 長門やビスマルクを期待して大型艦建造→5 00 00→陸奥…なんてことがよくある。 それでも運以外のステータスは長門とほぼ同じであり、主力として十分な能力があるのは変わらないので、大事にしてあげてください。 提督のセクハラに対して「だから!私の中で火遊びはやめてって言ってるでしょ!ねぇ、聞いてるの!?」と怒る。 「私の中で火遊び」って一体提督は何をやっているのだろうか…ちなみに、「本気にしちゃうぞ?」と受け入れるパターンもある。 アニメ版では秘書艦である長門の隣に立っていることが多い。 長門が秘書艦というより提督に近い立ち位置のため、陸奥の方が秘書艦ぽいという意見も。 2019年2月に改二実装。Lv89+設計図と、長門より1レベルだけ高い。 ロケランや特二式内火艇が搭載可能で、長門改二よりも陸上向けの仕上がり。 姉に続き特殊射撃も装備 ◆長門、いい? いくわよ! 主砲一斉射ッ! 所持艦:陸奥改二 発動条件:陣形選択時、梯形陣or第二警戒航行序列を選択+二番艦に戦艦を配置 発動タイミング:自身の砲撃時 発動確率:五割程度? デメリット:弾薬消費1.5倍 性能はほぼ同等で、2番艦が長門かNelsonだと威力にボーナスが入る。 二次創作など 長門 何事にも動じない自信と、それに十分な戦闘力を持った長門だが、 一方で、脳筋で繊細な作業が出来ない不器用であるとか、見た目と裏腹にかわいいものや甘い物が好きな乙女趣味だとか、 駆逐艦が好きで相手してあげたり、たまに辛抱たまらず手を出しそうになる…など、 ぽんこつなキャラ付けがなされていることがある。ギャップ萌えである。 こうした面を見せる長門は、連合艦隊旗艦の長門ではなく「ながもん」だ、なんて呼ばれたりする。 でも陸で夜戦に連れ込むとしおらしくなったりするのなんてかわいいと思います! この辺、史実で日本の戦艦の象徴とも言うべき存在だった(大和や武蔵は国民に極秘で知名度が上がったのは戦後である)ことが影響しているのだと思われる。 なお、こうしたキャラ崩壊は、ゲーム内では面倒見が良い程度でおさまっていたものの、2015/6/27のアップデートにて、「浜辺での夏期特別演習に必要」と称して駆逐艦に水着を強要したことが発覚。 ただ実際に水着を着てもらうことに成功しているので、今回ばかりはいい仕事である。(その前にしずまよしのり画のコンプティーク表紙で島風に頬を赤らめていたりするが) そして2015/7/3のアップデートにて追加された初夏限定ボイスにて、夏季特別演習がビーチバレーだった事が判明。 が、陸奥の初夏限定ボイスを見る限り、ビーチバレーのルールを知らなかったらしい。 ちなみに艦隊に「水着で砂浜に集合」させていたので、水着着用指示は別に駆逐艦限定ではなかった可能性もある。 シリアスでは、日本の顔として大きく喧伝されたにもかかわらず、航空戦の時代になり、また燃料不足などであまり出撃すらできず、活躍できなかった悔悟の念や、 終戦後、敵味方の艦船と共に、日本が投下されたのと同じ原子爆弾を浴びて沈んだ、クロスロード作戦について語られることも。 クロスロード作戦では酒匂とともに参加したことから、酒匂とは仲が良い様子を描かれることが多い。 2014年秋イベで登場したドイツ重巡のプリンツ・オイゲンも同じクロスロード仲間であるが、時報でも言及されておりどうやら顔見知りであるようだ。 ただ、3人共クロスロード作戦の話題になると「どこかで見た景色」「良くわからないが嫌い」「長門達と会った事があるのにどこで会ったか思い出せない」と 困惑しており、おぼろげにしか覚えていない事が示唆されている。 吹雪「思い出せなくてもいいことってあると思いますよ!」 あと、クロスロード作戦はビキニ環礁で行われたため、かの怪獣王と関連付けられる事もある。 (ちなみにクロスロード作戦はゴジラ制作のきっかけであるビキニ環礁での水爆実験ではないので直接的には関係ない) 特撮的なネタにされるのはビッグ「セブン」であるのも一因だろう(公式アンソロにもヒーロー「ビッグセブン」として描かれた作品がある) そして2016年秋イベント最終海域のE5において、長門にスポットが当たった。 同海域のモチーフとされるのは、かのクロスロード作戦。 この海域のボス戦で、長門・酒匂・プリンツの三隻は圧倒的な超火力、通称「クロスロード特効」を発揮。 多くの提督たちは、彼女たちの力でもってこの海域を突破したのだった。 彼女たちによって艦隊にやってきたのは、同じくクロスロード作戦で沈んだアメリカ空母Saratogaであった・・・ 高速統一でないと迂回ルートになるので高速のプリンツと酒匂だけ連れてく提督も多かったのは内緒だ!! 缶+タービンによる高速化シナジーさえあればどうにでもなっただろうに、よりにもよってその実装はこのイベントの終了直後という間の悪さである。 改二実装と同時に追加された時報では連合艦隊旗艦らしく堂々した性格が強調されているが、それを離れた私生活ではやや大雑把なのではと思わせる一面も見せる。 時報における他の艦娘との絡みとしては陸奥に昼食としておにぎりをもらったり、大和&武蔵と全力で演習したり、ウォースパイトからケーキの差し入れをもらったりしている。あと説明不要の夜戦馬鹿 意外にも駆逐艦はともかくクロスロード組との絡みはなし。ウォースパイトとの絡みがあるのは長門型の開発にはQE級の設計図が参考にされているためと思われる。 アニメ版では秘書艦として登場。 秘書艦ではあるが、提督の描写の都合から実質的にクールな指揮官のような立ち位置となっている。 しかし一方で辛い物が苦手と思われる描写があり、意外と子供舌なのかも知れない。また可愛いリスにメロメロになるなど「ながもん」的要素も混在している。 秘書艦としての立場に忠実であり、提督への忠誠心も高いと思われるが吹雪への異様な期待には疑問を感じていた。 公式4コマでも事ある度に駆逐艦からの人気を集めようとしたり大和に嫉妬したりする「ながもん」的要素が多く見られるが、 たとえ相手が敵であっても、子供の頼みなら駆けつける「子供達のヒーロー」っぷりを見せたり、 戦闘時は頼りになる指揮官として活躍している。ギャグ作品なんで戦闘場面は少ないが 陸奥 親しみやすいキャラから、むっちゃんなんて呼ばれて愛されている。 その豊かな肢体と色気を感じる声色などからくるエロさに誘惑され、火遊びしようとする提督も。 最近の限定ボイスだと雨の中出かけようとする長門に傘を用意したり、ビーチバレーをやろうとする長門に「ルール知っているのか」と突っ込んだりするなど、 長門の女房役的な立ち位置になってきている…あれ?この姉妹、どっちが姉だっけ…… 公式4コマでは史実で爆発沈没したため、事ある毎に第三砲塔の調子が悪くなって周囲を慄かせる爆発キャラ扱い。 一応、直接陸奥本人が爆発した場面はない(運動会編でバトン代わりに持っていた魚雷が爆発した事はある)が、 長門と陸奥の部屋は爆発対策が取られていたり、ゲームの方でも家具として入手できる「温泉岩風呂」は 4コマ版では陸奥が爆発して抉れた穴から沸いた温泉「陸奥の湯」という設定だったりする。 って言うかゲームでも本当にそういう設定だったりするのか? なお、長門は陸奥の爆発に毎回居合わせているらしく、「爆発なら慣れている」と豪語する。いいのかそれで。 一方、建造などで出現しやすいことが非常にネタにされている。 特にラバウル基地の提督は、長門狙いで建造時間5時間を引いた時そのスクショをスレにアップし、 陸奥になるビーム(略称MNB)なるものを打ってもらうと、長門にならず高確率で陸奥になるという風習があった。 おかげで陸奥はラバウルの女神として崇められたり、主神アラアッラーを崇めるムツリムなる宗教が誕生したり… ちなみにMNBのAAもあるが、なぜか比叡がよくビームを発射している。 当初はラバウル以外の提督にはあまり効果が出ず、射程が短いのではないかとも言われたが、 射程延長されたのか他鎮守府にも配備されたのか、現在ではあちこちの鎮守府で頻発し、すっかり有名になっている。 特にドイツ艦が実装された後、ビスマルクが大型艦建造で出現するようになったのだが、 その建造時間が長門型と同じ5時間であったため、こちらでもビスマルクが出ずに陸奥になるという事態が起きている。 しまいには、陸奥ばかり出る現象そのものにDMM(どうせみんな陸奥になる)なんて呼び名がつけられている。 どうしてそんな名前つけた! 言え!なんでだ! 他には、かたつむりのような軟体に陸奥の艤装と頭のカチューシャをつけた謎の生物「り陸奥たか」が目撃されているとか。 追記・修正か…胸が熱いな。 画像出典:艦隊これくしょん -艦これ- ゲーム内スクリーンショットより (C)2013 - 2015 DMM.com/KADOKAWA GAMES All Rights Reserved. △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 胸が厚いな・・・おっと間違えたw -- 名無しさん (2014-10-11 16 24 03) どうせみんな陸奥になる -- 名無しさん (2014-10-11 16 31 50) ↑どうしてそんなコメントつけた!言え! -- 名無しさん (2014-10-11 16 40 53) ????「大人のお姉さんいいねえ」 -- 名無しさん (2014-10-11 17 17 35) MNB M=陸奥 N=長門 B=ビスマルクでもいけるな -- 名無しさん (2014-10-11 17 49 25) この姉妹、二次創作だとまともに扱われているほうが少ない気がする…ゲームそのままのキャラだと扱いづらいのだろうか? -- 名無しさん (2014-10-11 17 52 21) 陸奥が育ったため長門がきても放置する提督も少なくないという -- 名無しさん (2014-10-11 18 30 51) おねショタ要員として便利だからなぁ -- 名無しさん (2014-10-11 21 19 40) 大型回してた時にダブらずに揃って「ラッキー!」と思ってたらほぼ間を置かずにもう一組出てきたことがあったわ -- 名無しさん (2014-10-11 21 32 45) 輪廻眼いつ移植されるんだろう -- 名無しさん (2014-10-11 22 17 41) 大型建造最小値でも来てくれるから、節度を守れば通常より高確率で引けるようになったのは大きいよね -- 名無しさん (2014-10-11 23 33 30) やめてください陸奥すら持ってない提督だっているんですよ! -- 名無しさん (2014-10-12 02 00 00) レアリティが高くても大型建造だとハズレに見えてしまう -- 名無しさん (2014-10-12 16 41 40) 長門は比較的序盤に来たのに陸奥が全然出なかった思い出 -- 名無しさん (2014-10-12 18 12 14) あの作戦の参加した艦娘たちが来たら長門とからみそうだな。 -- 名無しさん (2014-10-14 06 16 46) MNBは大型建造中なんどめいちゅうした事か…… -- 名無しさん (2014-10-14 14 13 09) 金剛型改二と大和型の間でぱっとしない印象。改二はよ -- 名無しさん (2014-10-14 16 05 24) HMMC:H=ハイパー M=みんな M=陸奥になる C=カノン 射線上の深海棲艦全てを陸奥にする。尚敵味方の識別機能は無い。しかも暴発の危険性もあり鎮守府で爆発した場合施設内の艦娘、提督、憲兵、妖精さん、エラー猫、その他人員の全員が陸奥になってしまう。 -- 名無しさん (2014-10-15 14 46 38) 艦娘ではなく艦陸奥になるのか・・・ -- 名無しさん (2014-10-15 15 27 46) 陸奥になるビームがとうとう来たと思ったら初長門だったでござる。・・・喜んでいいのか? -- 名無しさん (2014-11-03 11 51 18) 性能的には幸運の分だけ長門のほうが上だから普通に喜んでいいと思う。むっちゃんも強いけどね! -- 名無しさん (2014-11-03 12 23 11) 友人がウォーターラインの長門を作れないからと持ってきたので嫌がらせに、ファランクス×4、ハープーンキャニスター×4、VLSを付けたらソイツから新鮮だと逆に喜ばれてしまった…。 -- 名無しさん (2014-11-08 13 36 26) そういえば、むっちゃんの運の改初期値が5から6になったよ。やったね! -- 名無しさん (2014-11-14 03 47 43) 陸奥にナル光線キャノン -- 名無しさん (2014-11-14 05 50 33) エロ肉姉妹。 -- 名無しさん (2014-11-14 07 25 49) 長門と言えば少し前まではハルヒ。今は艦これ -- 名無しさん (2014-11-21 01 43 01) 20回以上回したのに 結果が陸奥5隻とその他とかwwwどんだけ確率低いの -- 名無しさん (2014-11-23 01 54 57) 「り陸奥たか」を見るたびにヨッシーアイランドのlv5中ボスを思い出すわ -- 名無しさん (2014-11-23 09 24 43) 某作戦なかまのプリンツちゃんが実装されたで、やっぱりあったわ・・・ -- 名無しさん (2014-11-23 09 26 38) たまに見るイケメン長門は惚れてしまう -- 名無しさん (2014-11-27 19 43 20) 世の中にはむしろ陸奥になるビームを浴びたい提督だっていると言う事、時々で良いから思い出してください。 -- 名無しさん (2014-11-29 15 16 36) 提督が浴びるのか…(困惑) -- 名無しさん (2014-11-29 15 22 33) 何気に大型建造の最小値でも来る事があるんだよなぁ・・・まぁ、通常建造で同じだけの量の資材を費やしても出てくる保証は無いんだが。 -- 名無しさん (2014-12-06 23 36 40) 通常建造だと大半の重巡が混じるから、そういうのを弾ける分は有利。東京急行が使えればもっと楽になる -- 名無しさん (2014-12-08 22 37 16) アニメ版の長門さんが一瞬だけ主役にみえちまった。 -- 名無しさん (2015-01-12 19 28 38) ↑主役は一応吹雪です……なんだけど、長門さんカッコよかったよな -- 名無しさん (2015-01-12 20 41 06) 長門に後ろから抱きしめられてなでなでされたい。 -- 名無しさん (2015-01-12 22 09 27) 辛いものは苦手なことが判明したながもん -- 名無しさん (2015-02-12 22 39 17) つうか6話冒頭の深刻な長門、実はカレー審査官を務める辛さが原因だよなアレwww -- 名無しさん (2015-02-12 22 52 40) まず甘口カレーの子が出場してくれないと困り、公正な審査の為にはあんまりクオリティに差が有りすぎても困る。定期的に食べる食事だし深刻そうな顔になるのも分からんでもない。 -- 名無しさん (2015-02-12 23 43 25) ヘイト集まりつつあった所でながもん要素とか汚いなさすがビッグセブンきたない -- 名無しさん (2015-02-13 03 29 08) 長門は某所では陸奥以上に天龍と絡んでいるロリコンで、深海棲艦や駆逐艦に手を出そうとしたり場合によっては天龍で妥協しようとしたりするキャラがお約束の一つで有る -- 名無しさん (2015-02-13 03 57 26) 1週間前から艦これ始めて、霧島さんが来れば万々歳と思って始めて戦艦レシピで作ったらいきなり長門さん来てビックリした。なお今は基本待機の模様(昨日むっちゃんも来た) -- 名無しさん (2015-02-13 17 28 59) 来ない!頼む!長門!むっちゃんと共に君の力が必要なんだ!! -- 名無しさん (2015-02-13 18 49 43) (通常建造で両方あっさり来て)すまんな -- 名無しさん (2015-02-13 19 21 42) (E3攻略中に長門二人、陸奥一人ドロップして)すまんな -- 名無しさん (2015-02-13 19 40 07) ↑ ↑↑ちくしょうめぇえェえ!! -- 名無しさん (2015-02-13 21 56 26) 引き締まった健康的なお腹最高! -- 名無しさん (2015-02-14 03 10 13) (大型でまるゆ狙いだったのにあっさり最小値で来て)すまんな -- 名無しさん (2015-02-14 10 08 40) E-3で那珂野倒したらまさかの長門だった・・・ -- 名無しさん (2015-02-24 20 51 55) アニメ、段々とながもん化してきたなw 中の人が那珂ちゃんと一緒なのを忘れてたわw -- 名無しさん (2015-02-28 04 11 40) どうして大型建造最小値でコロコロ出てくるんですか勘弁して下さい・・・・・・・・。 -- 名無しさん (2015-03-01 09 56 02) ↑41cm砲を持ってきてくれるから改修が捗るな。 -- 名無しさん (2015-03-01 10 16 00) むっちゃんは意外と台詞が少ないからキャラの掘り下げが地味に難しい…所で長門の事は何て呼んでるんだろう -- 名無しさん (2015-03-13 20 34 00) ↑だいたいは「長門姉ぇ」でたまに「長門姉さん」がある感じだな、二次創作だと -- 名無しさん (2015-04-18 20 52 39) 扶桑型やビスマルクの強化で、中途半端な火力だけで取柄のない戦艦でしかないなあ。ほかと比べて長門型だけの武器がなにか欲しい -- 名無しさん (2015-05-23 04 57 05) ↑3 梅雨限定ボイスで長門の事は呼び捨てにしてる事が判明したな。最早夫婦みたいな感じだった -- 名無しさん (2015-05-23 05 24 28) ↑↑素の火力は大和型>>>イタリア艦・霧島>その他>>>伊勢型だからなぁ。耐久面が高い、通常建造で出てかつ改二まで待たなくても戦力になる、一応41cm砲が確実にフィット砲として使える(扶桑型伊勢型はどうも怪しい)って辺りで、まだ使えないわけじゃない -- 名無しさん (2015-06-01 21 57 14) 神通の鬼教官が史実なら、反対押し切って訓練させた上に美保関事件おこして救出作業をほったらかして帰ろうとした旗艦・長門は無責任ドクズだなw -- 名無しさん (2015-06-22 01 24 43) 俺の(陸奥に)ナルビームだったら提督の(思考)回路をバラバラにできる、受けてみろ! -- 名無しさん (2015-07-30 21 08 22) しずま先生曰く、「二番艦はス〇ベボディ」とのこと。陸奥、武蔵、照月のことでしょう -- 名無しさん (2015-12-25 14 10 47) 「長門は俺の嫁だっ!!」 -- 怪獣王 (2016-01-06 06 30 40) ↑因みに長陸奥役のあやねるはシン・ゴジラ既に3回見てるみたい、今度4回目見に行くらしいが -- 名無しさん (2016-09-11 06 57 26) 限定ボイスの長門やけに声が低すぎる気がするんだが演じ方忘れてるんだろうか -- 名無しさん (2016-12-30 15 36 47) 改二、揃う -- 名無しさん (2019-02-27 21 44 38) 知らん間に51cm砲にペナルティが追加されたらしいな -- 名無しさん (2019-10-09 16 08 29) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukipo/
長門有希さんみたいな女の子@まとめ 長門有希みたいな女の子を探していた 1のお話ではありません 現行スレッド【パー速VIP】 年末年始もベーコンアスパラ食おうぜ http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1167535840/ 長門煮の子に惚れた http //www17.ocn.ne.jp/~nowhere/nagatoni/index.html こちらのサイトは過去ログをhtml化して置いてくれてます まとめじゃ出来ない事もしていただける予定? さすが長門煮の子に惚れたの管理人! まとめじゃ出来ない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる!あこがれるぅ!
https://w.atwiki.jp/xghshuthj/pages/553.html
効果モンスター/レベル1/神属性/宇宙人族/攻撃力200/守備力100 このカードの効果は無効にできない。 このカードの効果または発動を無効にする効果を無効にし破壊できる。 このカードが持ち主以外のフィールド上に存在する場合、 このカードのコントロールは持ち主に移る。 自分フィールド上に表側表示で存在する このカードを手札に戻すことができる。 自分フィールド上の「長門」と名のつくモンスターが 戦闘を行う場合、ダメージステップ時にこのカードを 手札からこのカードを捨てることで、そのモンスターの攻撃力は そのモンスターの元々の攻撃力の2倍+戦闘を行う相手モンスターの 攻撃力分アップする。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2641.html
長門有希の憂鬱Ⅰ 三 章 俺はひどい頭痛と轟音とともに目が覚めた。 自分がどこにいるのかしばらく分からず、起き上がったところで天井に頭をぶつけた。 あれ、こんなところに天井があったかな。 そうだった。俺は泊まるところがなくてホームレスに段ボール箱を借りたんだった。 頭上では電車がひっきりなしに行き来している。 俺はそろそろと箱の外に出た。寒い。震え上がってまた中に戻った。 段ボール箱の中、意外に保温性があるんだな。手放せないわけだ。 俺はジャンパーを着込み、身をすくめてやっと外に出た。 一晩の宿は冷蔵庫の箱だった。それを見てまた寒気がした。 時計を見ると七時だった。おっさんたちはまだ寝息を立てているようだ。 俺はサンちゃんの家に、その玄関らしきところからありがとうと書いたメモに千円札を挟んで差し込んだ。 もしかしたら明日も世話になるかもしれない、などと不安と期待の入り混じった気持ちを残しつつ、その場を離れた。 俺は駅のコインロッカーに荷物を取りに行った。 重たい文庫の山が入ったバックパックを取り出した。 財布の中身を確かめた。残りはあと三万ちょいだ。 確かに金がないと身動きが取れない。古泉、恩に着るぜ。 俺は極力節約することにした。簡単に考えていたが、五万という金額はあっという間に消えてしまうだろう。 このままいけば金は確実に底をつく。それまでに長門を見つけないとな。 背伸びをしても腰が痛い。 風呂にも入りたいが、この辺に安い銭湯とか健康ランドみたいな施設はないだろうか。 この時間にやってるはずもないよな。 二十四時間営業のネットカフェならシャワーがあるな。 もう七時だから十八才未満でもかまわんだろう、ついでに飯も食おう。 俺は六時間パック料金を払い、とりあえず昼まではここで過ごすことにした。まだ眠い。 シャワーのお湯はややぬるいが、ホコリと排気ガスにまみれた俺にとっては天使の水がめから流れ落ちる滝だった。 ほんとはブースとかフラットシートでゆっくりしたかったが、料金が安いオープン席にした。 パソコンの前に座り、ヘッドホンをかけて音量をミュートにし、そのまま腕を組んで眠り込んだ。 画面にはスクリーンセーバが写っているだけだった。 「── お客様、お客様」 店員に起こされた。 「そろそろお時間ですが、延長なさいますか?」 ああ、もうそんな時間か。俺は口から垂れていたよだれを拭いて、一旦出ますと断った。 六時間もこの姿勢でよく眠れたもんだ。立ち上がって背伸びをした。夢さえも見なかったようだ。 朝飯を食うのを忘れていたせいか、心地よい空腹感を感じた。 ちょうど一時だ。飯を食ってサイン会場に向かおう。 昨日訪れた書店に向かった。 エスカレータを降りてすぐ、もう人だかりが出来ているのが見えた。 谷川流先生サイン会にお越しのお客様は並んでお待ちください、と立て札に書いてあった。 しょうがない、最後尾で待つか。先着百五十名とあったから、俺は百五十番目くらいか。 女子学生やら、見るからにアニオタ少年やら、中年のオバさんやらに混じって耐えること耐えること小一時間。 二時十五分ごろ、行列にようやく動きがあった。前のほうで拍手が沸いたので、先生とやらが登場したのだろう。 ポップやら登りやらが取り囲む中で、テーブルについた中年の(おっさんと言っちゃ失礼かもしれないが) 痩せ型の青年がいた。中年の青年って何だ?まあその間くらいか。 テーブルには文庫が平積みしてあった。そこには俺が持っている十三巻はなかった。 行列も終盤、谷川氏の笑顔にやや疲労が見える。 「谷川……さんですか」 「そうです」 「サインお願いします」俺はバックパックから昨日買った文庫を取り出した。 「はい、お宛名は?」谷川氏はマジックを取り出してキャップを外した。 「キョンです」 「え?キョン君?」ウケを狙ったわけじゃないんだが、谷川氏は笑いそうになった。 それから俺はバックパックから例の文庫本を出して見せた。 「ちょっとこれのことで内々にお話したいことが」 「……」谷川氏には分かったようだ。俺が持っているこの十三巻は、まだ存在していないはずだ。 「十五分ほど時間取っていただけませんか。重要なんです」 「あそう。……じゃあ、五時ごろマルビルのスタバで会えるかな?」谷川氏はこっそり耳打ちした。 「分かりました。じゃあ五時に」 俺は礼を言ってその場を離れた。 谷川氏は次の客がサインをせかすのに笑顔を見せながら、片方で怪訝な顔をしていた。 ええと、マルビルってどっちだ。 俺はそれからの小二時間を一杯のチャイラテで過ごした。 こないだまとめ買いしたハルヒの文庫本を読みつづけた。 これに書いてあることは、すべて事実だ。 俺にもよく分からんのだが、ここまで忠実に表現できるのは、 谷川氏と俺のいた世界には密接なかかわりがあると考えるのが妥当だろう。 店員がチラチラとこっちを見るので、チャイラテをもう一杯頼もうかどうしようかと考えていたら、腕時計が五時を回った。 しばらくして谷川氏が入ってきた。こっちに気がついて手を振った。俺は椅子から立ち上がって深くお辞儀をした。 たぶんこの人にしか助けてもらえない、そんな気がしていた。 「お忙しいところすいません」 「いやいや、かまわないよ。今日はもう一仕事終えたから」 谷川氏がチラチラと俺の手元を見ている。気になっているようだ。 「ああ、これは昨日買い集めたんです。見せたいのはこっちのほうです」 十三巻を取り出した。 「日付を見てもらえますか」 「これ、一年後だね。同人がネタで作ったの?」 「そうじゃありません。実物だと思います。未来から送られてきた」“未来”というところをわざと強調した。 谷川氏が唖然としていた。いつもの俺ならそうする。 「それに、発行が角川と書いてあります。 同人サークルは出版社を騙ることはしませんし」これは古泉の受け売りだ。 俺は自分のいた世界のことを話した。SOS団、ハルヒ、その周辺。 「驚かれるかもしれませんが、あなたの書いた小説は俺の身に実際にあったことなんです」 「キミの話だと、まるで僕の本から出てきたような印象を受けるが……」微妙に、不審者を見る目だ。 「そうとも言えます。よく分かりませんが、あなたの作った世界は実在するんです」 「よくわからん……というより信じられん。最近は成りきりキャラみたいな人が多いんでね。コスプレとか声真似とか」 「ええ。俺も昨日、アニメオタクと間違われました」 「なにか確信を得られるようなものはあるかな?証拠というか」 「証拠ですか……向こうでの俺の記憶くらいでしょうかね」 「キミの本名は?本編には書いてないんで誰も知らないはずだが」 俺は自分の名前を告げた。 「……」谷川氏は無言で俺を見つめた。 「全部、とりあえず保留でいいかな。別世界とか、この存在しないはずの十三巻とか」 前に似たようなセリフを誰かに言った覚えがあるな。 「ええ。俺はその、なにか特殊な能力があるわけじゃなくて、ふつーにその辺にいる高校生と同じですから」 「それを聞いて安心した」 「このシリーズのストーリーはどうやって思いついたんですか?」 「四、五年前だったか、新聞記事にとある事件が載っていてそれで閃いたのがきっかけかな」 「とある事件といいますと」 「地元の中学校のグラウンドに謎の地上絵が出現した」 俺の髪の毛がピクリと動いた。 「記事によれば子供のいたずらだろうってことで、結局犯人は分からなかったらしいんだが。 それが子供が描いたにしちゃえらく精密に描かれていてね」 「その絵ってもしかしてこれですか」俺は十三巻の挿絵を示した。 「そうそう、それ。アニメにも出てたよね」 「ちょうどこの挿絵にかかったところで、こっちの世界に飛ばされたんです」 「そんなことが起るとは……」 谷川氏は腕を組んでしばらく考え込んだ。 もうここまできたら、本来の目的を言うしかない。 「それで、長門有希のことなんですが、あいつはすでにこっちの世界に来ているかもしれません」 「それはほんとか」 「長門が消えたのは俺のいた時間で三日前なんですが、あいつから接触はありませんでしたか」 「うーん……ファンの女の子は多いし、イベントでもコスプレしてる子が多いし。 もしそんな子が接触してきてたとしても覚えていないかもしれない」 「なにか特別なメッセージとか、手紙とか」 「どうだろうね」谷川氏は考え込んでいた。 俺が長門ならどうするだろう?唯一の接点である谷川氏とコンタクトを取るには?そして俺にメッセージを残すには? 「長門を探し出すために手を貸してもらえませんか」 「ちょっと考えさせてもらっていいかな。調べたいこともある」 「明日また会えますか?」 「明日は三時から一時間くらいまでなら時間取れるよ」 「じゃあまた明日ここに来ます」 「一応連絡先を教えてくれないか」 「ええと、今こっちの世界では連絡手段が何もなくて。俺の携帯も使えないんです」 「え、じゃあ今どこに住んでるの?」 「住んでるところはありません。カプセルホテルやらネットカフェやらをはしごしてます」 さすがに高架ガード下で寝ましたとは言えなかった。 「そりゃ体壊すよキミ……」 「ええ。でも身寄りもありませんし」 「なんとかしてやりたいけど、……キミさえよければうちの客間に泊まってもらってもかまわないが」 願ったりだ。もうあの段ボールで寝たときの腰の痛さときたら。 「ほ、ほんとですか。助かります」 もうがっついていた、俺。このときほど人の親切が身に染みたことはなかった。 「とりあえず、うちに行こう。うちというか、僕の祖母の家なんだけどね」 谷川氏とタクシーに乗り込んだ。運転手は残念ながら新川さんではない。 「谷川さんて西宮が地元なんですか」 「そうだよ。北高出身だし」 「え……北高ってこっちにも実在するんですか?」 「いちおうモデルになったのはある。 僕が通ってたのは、ふた昔くらい前だから若干雰囲気違うけど」 「じゃあこの小説に出てくる建物やら、街はみんな実在する?」 「するよ」 「知りませんでした。昨日、思い当たる節があって図書館と甲陽園駅に行ってみたんです。 俺の知ってる風景とそっくり同じだったんで安心したというか、驚いたというか」 「そう。あの辺はファンがよく観光してるらしいね」 「うわ……それでですか」 「なにかあったのかい?」 「実は、長門が住んでるんじゃないかと思ってマンションのインターホンを押したんです。 オバさんに怒鳴りつけられました」 谷川氏はあははと笑った。 「アニメがヒットして、住民はえらく迷惑してるだろうね。 あのマンション、現物が分からないように絵の位置を変えたりはしたんだけど」 「これじゃうかつに探して回れないですね」 「あの辺はうろうろしないほうがいいかもねえ」 しかしまあ、俺とこの世界との接点が見えてきて、ちょっと安心した。 長門がいるとしたら、あいつもその繋がりに気付いたに違いない。 一時間くらいしてタクシーが止まった。 「着いたよ」 俺はドアから降りた。 「こっちだ」谷川氏が指したのは日本建築のお屋敷だった。 「こ……これ、もしかして鶴屋さ……」 「ああ、そうそう。鶴屋家の屋敷のモデルはここなんだ」 あれと同じ漆喰の壁が続いている。俺は感激した。知っている、これならよく知っている。 ハルヒの映画で舞台に使わせてもらい、朝比奈みちるさんをかくまってもらい、それからそれから。 くぐり戸から母屋の玄関までがやたら遠い、あの鶴屋邸だ。 「もしかして鶴屋さんもいるんですか?」 「さあ、それはどうかな」谷川氏はプッと笑った。 重たい玄関の戸を開けて中に案内された。土間だけで軽く俺の部屋くらいはある。 和服を着付けた鶴屋さんが今にも出てきそうな雰囲気だった。 「ばあちゃん!ばあちゃんいるかい?」谷川氏は奥に向かって叫んだ。 和服に身を包んだ小柄なおばあちゃんが、しゃなりしゃなりと出てきた。 「おやまあ珍しいじゃないか、お友達かい?上がっとくれっ」 な、なんか微妙に鶴屋さんっぽい。 「観光に来た友達のキョン君なんだけど、今日、泊めてもらえる?」 「いいともさ。ささ、奥にお上がり。お湯もたんっと沸いてるさね」 俺はおばあちゃんに向かって、すいませんお邪魔しますと言って靴を脱いだ。 廊下を進むと木と漆喰の匂いがした。この匂い、鶴屋さんちと同じだ。 「キョンさんは、」おばあちゃんがふと振り向いて言った。 「スモークチーズは好きかい?」 もう笑うしかなかった。 二十帖くらいはありそうなお座敷に通された。 俺は部屋の隅にバックパックを置いて、所在なさげに見回した。どこに座ればいいのか迷う。 「あの、離れってあるんですか?」 「隠居のことかな、たぶん空いてるよ。そっちがいい?」 「ちょっと、落ち着かなくて」まるで朝比奈さんみたいな口調の俺だ。 茶室みたいなこじんまりした造りの、離れに案内された。 「鶴屋さんちとまったく同じですね」 「うん。わりと凝った和建築の様式らしいよ。こまごました、明かりとり用の窓とか、この欄間とか建具類も」 「へえ」築百年くらいは年季が入っている気がする。 「先に風呂を案内するから、来て」 風呂ですか、ありがたい。鶴屋家はたしか、檜風呂だった気がする。 「残念ながら風呂だけはステンレスなんだ。檜はカビたり腐ったり、手入れがたいへんでね」 そうなんですか。鶴屋家も屋敷のメンテナンスに苦労してるんだろうな。 「お湯がぬるかったら蛇口ひねれば出るから。あと、浴衣置いとくから使って」 まったくかたじけない。 突然現れてあっちの世界から来ましたなんて延々電波なことを言ったあげく、 泊まるところがないからと上がり込んだりして、風呂まで借りて、俺ってなんて図々しいんだ。 大人四人が楽に入れそうな浴槽に浸かりながら、俺は体の疲れをほぐした。 今日はネットカフェで寝ていただけで、たいしたことはしてないが、繁華街を歩いてるだけで疲れる気がする。 谷川氏の好意で、しばらく、といってもいつまでかは分からないが、綿の入った布団で眠れそうだ。 まったく、外で寝るのは体力も気力も消耗する。 あのホームレスのおっさん、風邪ひいてないだろうか。 渡された浴衣を着込むと、気持ちまで和風になってきて、その雰囲気に馴染んでる自分がいた。 こういう純日本人らしい生活スタイルもいいよな。 浴室を出ると、おばあちゃんがそのままじゃ風邪を引くだろうからと半纏を貸してくれた。 なんてやさしいおばあちゃんだ。感涙だ。 食堂に呼ばれて中に入ると先に谷川氏が来ていた。食卓には漆塗りの食器が並んでいた。 「若い人が好むようなものは、ないんだけどね」 いえいえ、ファーストフードで飢えをしのいでいた俺には、天皇の料理番が作るほどの高級料理ですよ。 味噌汁が、うまい。おふくろには悪いが、うちの味噌汁よりうまい。 そう言うとおばあちゃんは顔をくしゃくしゃにして笑った。 「キミの世界の話を聞かせてくれないかな。家族とか、友達とか」 そうですね、と口を開きかけてチラとおばあちゃんを見た。 「ああ、気にしないでいいよ。おばあちゃんは他人の秘密には干渉しない人だから」 またしても鶴屋さんスタイルだな。 「干渉しないから、かえって秘密が舞い込んでくるんだけどね」 それはうらやましい。情報通ですね。 「ええと、俺の家族は親父とおふくろと、妹がひとり、これが最近マセてきて小うるさくて。 あとは拾った三毛猫が一匹」 この辺は谷川氏も知ってるだろう。あの文庫に書いてないようなことを言わなくてはな。 シャミセンに彼女らしきものが出来たとか、妹の部屋でつい日記を盗み読んでしまって 片思いの相手がいることを知ったとか、まあ家族の細かい話だ。 「初耳だ。その辺は僕の小説にはないね」 こういう日常的な仔細を小説の中で表現するには限界があるかもしれない。 「キミには彼女はいないのか?」 話の展開からすると、ここでギクリとするべきなんだろうが、あいにくとそういう関係はなかった。 「それは谷川さんがいちばん知ってることでしょうに」 「そういえばそうだね」谷川氏は頭をかいた。 「キミはハルヒと長門有希、どっちがいいと思う?」 答えに詰まる質問だ。 「どっちと聞かれても、そういう目で二人を見たことはないんです」 って谷川さん、朝比奈さんって線はまったくないんですか。 「なにかこう、伏線があったはずじゃないか」谷川氏の目は、ちょっとワクワクしている。 「伏線……ね。そういえば雪山の山荘とか、長門の暴走とか、バレンタインデーとか、 二人が妙な行動をすることはありましたが。もしかしてあれ、そうなんですか」 「まあ、キミには一切が分からないように話を展開させてるから、しょうがないんだけどね」 「俺の知らない水面下でそんな話が進んでたりするんですか」俺は苦笑した。 「って、あれ!?僕はまだキミが向こうの世界から来たと確信したわけじゃないんだが」 谷川氏は、はははと笑った。 「こうやって自分の頭の中で組み立ててることを他人とまじめに会話するってのは、楽しいね。 新しい発見があるかもしれない。今後の展開の参考にしよう」 なにやらメモをはじめた。 「キミが話してくれた事件もメモっとくよ」 なにやら謎めいた記号みたいなもの書いている谷川氏を見て、俺はふと思いついた。 「これ、もしかして既定事項なんじゃありませんか」 「というと?」 「俺が話した内容で、谷川さんがこれから十三巻を書くわけです」 「なるほどね」ちょっと考え込んだふうだった。 「ええと、じゃあ僕がキミから話を聞いて十三巻を書くとして、 キミが持ってきた十三巻を最初に書いたのは誰?」 えーと……。これは重大な問題だった。卵が先かニワトリが先か。 谷川氏は笑った。「これはタイムトラベルをする者の、悲しいサガ、だね」 俺はそのセリフになぜかデジャヴを感じた。 二人で考え込んでいると、あの部室でのことを思い出した。 「あの十三巻は、読んでると話がループするんです」 「そうなのか」 「つまり、俺が読んでるシーンを読んでる俺が、それを読んでるシーンをまた俺が、」 頭痛くなってきた。 「二枚の合わせ鏡みたいで、まともに読みつづけられないんです」 「それ、作中の人物がその物語を読むパラドクスだね。似たような話はある」 「それじゃ物語が進まないですね」 「……もしかすると、そのループが次元の歪みを生んだのでは?」 「俺にはちょっと難しいです」 「つまり、二枚の鏡に写った最初の映像はどっち?終わりはどこへ?光が無限に往復する」 谷川氏は人差し指を左右に往復させた。 「……難しいですね」 「ほかにも似たような現象はある。ビデオカメラでテレビを撮ると、映像の中に映像が延々と生じる」 「三次元のループですね」 「そう。これがもっと高次元のループだとしたら、キミは渦の中に巻き込まれているということになる」 「……」 「いいアイデアだ。メモしとこう」 って、ネタだったのかよ。どうも作家の考えることは分からない。頭の中、どうなってんだろ。 そんなSFとも数学ともつかない話をしながら時は過ぎていった。 十一時を回ったところで谷川氏は腰を上げた。 「僕は自宅に戻るから。気兼ねしないでいいよ」 「ご自宅、ここじゃないんですか」 「ここはおばあちゃんがひとりで住んでる家でね。僕は仕事場兼自宅を持ってる」 なるほど。作家ですもんね。 俺はおやすみなさいを言って谷川氏を見送った。 寒空に星がまたたいている。明日は晴れそうだ。 翌朝、おばあちゃんに呼ばれて食堂で朝飯を食った頃、谷川氏がやってきた。 「よく眠れたかな」 「ええ、ありがとうございます。おかげさまでぐっすり」 「そう、僕は枕が変わると眠れないたちでね。だから他所んちにはできるだけ泊まらない」 俺は石の上でも寝れそうな気がしますよ。一昨日は紙の上でしたが。 「昨日話した、例の地上絵の新聞を探しに行こう」 「どこへですか?」 「市立図書館に。あそこには過去十年分くらいの新聞があるから。 もしかしたら頼めば二十年前くらいは見せてくれるかもしれない」 なるほど、そういう探し方もあるのか。昨日は長門の後ろ姿しか追いかけなかったからな。 図書館には二度目の参上だ。一昨日のことを思い出すと今でも赤面する。 もしかして長門がいてやしまいかとキョロキョロと見回してみたが、それらしい風体の女の子はいなかった。 谷川氏はカウンターで保存資料閲覧を申し込んでいた。 しばらく待って、奥にある書架に通された。 パソコンの端末でマウスを動かしている。 「新聞というから古新聞が束になって積んであるのかと思いました」 「過去数年分のは全部電子化されていてね。 インデックスもついてて目的の記事を探し出すのも簡単だよ」 「あったよ。これだね」谷川さんが画面を指さした。 その記事のタイトルは“学校の運動場にミステリーサークル出現”だった。 「ミステリーサークルじゃなくて地上絵なんだけどね」 この絵文字、挿絵と同じものだ。そう、七夕のときハルヒが東中のグラウンドに描いたアレだ。 正確には俺が描いたんだったが。 「これ、子供が描いたんじゃないかって推測してるけど。 まっすぐな定規もない、見下ろす場所もない広い地面に絵を描いたことあるかい? これは図形と幾何学の知識がないとできないんだよね」 もしかしてハルヒがこの世界に存在しているのか?そんなはずはあるまい。じゃあ誰だ?。 「この絵、挿絵とちょっと違うところがありますね。この右下のやつ、花に見えませんか」 「どう……だろう。言われてみればそう見えなくもないけど」モノクロの荒い写真だから分かりづらいが。 「長門が残した栞に印刷してあった花の絵じゃないでしょうか」 とすれば、これを描いたのはあいつしかありえない。 俺は長門が部室から消える直前に言った言葉を思い出した。 「わたしは……ここにいる」 これは救助要請だ。俺はうなずいた。 「これを描いたのは長門です。それ以外考えられない」 「そうなのか。でもこれ、五年も前だよ」 確かに新聞の日付は五年前の十二月になっている。 「仮に、こっちと向こうの世界の時間がズレたとしたら、理屈は通りませんか」 「……うーん。どうだろうね」 五年も前にあいつがこっちに来たのだとしたら、無事に生きているかどうか不安になった。 ハルヒも俺もいない世界で、目的を失って自らの情報連結を解除したりしないとも限らない。 「谷川さん、長門が暴走したときの話覚えてますよね」 「ああ、消失ね」 「俺が言うのもなんですが、長門はどんなときでも必ずメッセージを残すやつなんです。 それも本人にしか分からないやり方で」 「なるほど」 「北高の文芸部の部室って存在するんですか」 「……ははあ。キミの考えていることは分かった」 俺はそこに侵入することを考えていた。 「昨日も言ったけど、当時とはずいぶん変わってるしね。 一度取材に行ったけど、そのときにはもう僕が思い描いている部室はなかったね。 むかし文芸部だった部室はあるけど」 「ちょっとだけ覗いてみるわけにはいきませんか」 「うーん……。いちお学校の関係者に聞いてはみるけど、期待しないほうがいいと思うよ。 なんせアニメに出たもんだからピリピリしててね」 そうなんですか。 「部室でなにを探そうっていうんだい?」 「あのときと同じ本があるんじゃないかと」 「ハイペリオンかい?」 「ええ、それです」 「実はあのハードカバーが出たのは相当前の話なんだ。今は文庫しかないんじゃないかなぁ」 「だったら、なおさらです。それが存在すれば長門からのメッセージがあるかもしれない」 「そうか。聞いてみとくよ。父兄の見学ってことで」 「お願いします」 記憶を蘇らせるために、俺はまた同じ道を辿る、だ。 「ああそうだ、ハイペリオンならここにもあるはずだよ。探してみたかい?」 「ええ!そうだったんですか。それは気がつきませんでした」 俺はめったに来ないであろうSFのコーナーを探した。長門に借りてそのままだ。 二人でSF、ミステリーのあたりを探したんだが、結局見つからなかった。 パソコンの端末の蔵書データベースで調べてもらったが、確かにあるらしい。 「誰かが借りてるんだろね。長門有希の百冊に入ってたし」 「なんですかそれ」そういやぐーぐる様もそう言ってたな。 「長門有希が作中で読んでるって設定の百冊を僕がピックアップした。その中にあれも入ってた」 なるほど。人気あるわけか。 「しょうがない。今日のところは帰ろうか」 「そうですね」 俺は先日とんでもない人違いをした棚のほうを見た。突然話し掛けられたほうも驚いただろう。 俺はハルヒの文庫が入ってるかどうかを見ようと、文庫の棚の前をそろそろ歩いた。 そのとき、なぜかその本だけが目に入った。“ハイペリオン ダン・シモンズ” とっさにページをめくった。ハラリと何かが落ち、俺は稲妻に打たれたかのような衝撃が走った。 あのときの、栞だった。 「こっこっこっ」 「こけこっこー?」 「違います、これ、長門です。ぜったい、長門です」 俺は栞を見せた。今度は大声を出してもはばからなかった。これは断じて長門だ。 図書館の本に手製の栞を挟むやつは、まずいない。これは長門、絶対に長門だ。 栞には例の絵文字と、薄紫の花が描いてあった。文字は書かれていない。 長門が暴走したとき、部室にあったやつと同じだ。 「消失のときのと同じだね」谷川氏にも分かったようだ。 「ぜったいそうですよ」 「これの意味は、知ってるよね」 「わたしは、ここにいる、です」 「これが憂鬱のときの栞ではないということは、つまり、消失のときと同じ、キミへのメッセージだね」 「で、ですよね」俺はワナワナ震えていた。もう長門を見つけたも同然だ。近くにいる。 「ちょっと来て」谷川氏はその本を持ってカウンターに向かった。 なにやら受付のお姉さんとボソボソ話したあと、俺のほうに向き直った。 「過去にこれを借りた人を調べてもらってる」それはすごい。電子戦ですね。 「この文庫本が出たのが約七年前、ハードカバーはそれより前。 この本が入庫したのが三年前で、借りたのはトータルで二百人くらいだそうだ。 残念ながら借りた人の名前は明かせないらしい。個人情報だからね」 ああ、こっちの世界でもその辺が厳しいんですね。 「最後に借りたのはいつか分かります?」 「二週間ほど前らしい」 ……それは長門だろうか?その可能性はあるだろうか? 「すいません」俺は受付のお姉さんに話し掛けた。 「ちょっとこの写真見ていただけませんか」俺は長門とハルヒが写っている写真を見せた。 「この、髪の短いほうの子、見かけませんでしたか」 お姉さんは、うーんともふーむともつかない声を出した。 遠目に近目に写真を見ていたが、ちょっと覚えていないと言った。 これだけ人が出入りするんだ、覚えていろというのが無理な話かもしれない。 「写真持ってたんだ?」 「あ、まだ見せてませんでしたね。すいません」 「これはまた美人だな。僕はアニメでしか見たことないから」 「そうなんですか」まあ当然っちゃ当然だが。アニメでないならただのコスプレだろう。 「実写版やるとしたら、まさにこんな感じだよなぁ」 実写ドラマやるのか……かなり映像に無理があるんじゃ。閉鎖空間とか。 俺は図々しくもお姉さんに、もしこいつが来たら俺が来たことを伝えてくれるよう頼んでおいた。 長門ならそれだけで十分だろう。あとは情報操作とやらで俺の居場所は分かるはずだ。 図書館で重要な手がかりを得たあと、午後には屋敷に戻った。 「東中のグラウンドを見てみたいんですが」 「中に入ってみたいかい?」 「ええ、できれば」 「教師にひとり同級生がいるから、聞いてみよう」 谷川氏は電話でしばし世間話をしたあと、グラウンドを見てみたいんだが、と切り出した。 「四時頃ならいいらしい」 「ありがたい」 「とはいっても、ただのモデルだからね。名前は違うし、見た目も若干も違うけど」 あの場所は忘れようにも忘れられない。ハルヒが俺とはじめて出合った場所だ。 過去の七夕には朝比奈さん(小)を背負って歩かされた。 谷川氏の車で中学校まで乗りつけた。谷川氏の同級生という男性教師が迎えてくれた。 「ここも舞台になってるんだけど、北高ほどは知られてないんだよね」 作中の東中は若干位置がわかりづらいらしい。 谷川氏と俺は校舎から出てネット越しに運動場を眺めた。 「最近は関係者以外は中には入れないけど。むかしはよくここで遊んだよ」 確かに広い。昼間見るのは、はじめてだ。 「こんな広いところによく地上絵を描いたな」実際は向こうの世界のここだが。 「地上絵を描くのって意外に難しいんだ」 「ハルヒの頭の中では文字すべての線の長さと角度が計算されてたんですね」 「ハルヒは数学が得意だからね」 「よく知ってますね」 「そりゃまあ、僕が生みの親だし」 もっともだ。 冷たい風が吹きぬけた。俺は襟を立てた。 グラウンドの向こう側で陸上部らしい女子生徒が走り回っていた。 ハルヒの中学時代はこんな感じだったんだろうか。俺は校区が違うから、ここにはなじみはないんだが。 中学生のハルヒは奇妙なことばかり繰り返していたらしい。 谷口曰く、かわいいからと思って話し掛けるとトゲのある答えしか返ってこない、バラみたいなやつだったと。 親しい友達もなく、親にも打ち明けられず、ひたすら孤独だったことだろう。 あいつはあれからずっと、ジョン・スミスを探していたのかもしれない。 柄にもなく、昔のハルヒを思い浮かべた。あいつの顔じゃ、あんまり郷愁は感じないが。 俺が探さないといけないのは、ハルヒとの接点じゃなかった。俺と長門を結ぶ接点だ。 だからここにはなにもない。俺たちは三十分くらいでその場から引き上げた。 この屋敷にやっかいになって三日が経とうとしている。 翌朝、谷川氏が言った。 「北高の見学、聞いてみたけどね、やっぱり無理らしい。今ちょうど受験シーズンで、 先生も生徒もピリピリしてるから、年が明けてからにしてくれってことらしい」 「そうですか」予想はしていたが。年明けまではとても持ち越せない。 まあ俺が中に入れないってことは長門も予想できただろうし、 ということはメッセージは何も残してない可能性が高い。 そう考えて納得することにした。最近はあきらめるのにも理由を考えるようになった。 谷川氏は今日は出版社で打ち合わせがあるので、調査には付き合えないとのことだった。 執筆の仕事もあるだろうに、毎日つき合わせては申し訳ない。 俺は自転車を借りて町並みを回ってみることにした。 ハルヒが超監督で撮った映画の舞台を追ってみた。 長門と朝比奈さんが対決した森林公園、朝比奈さんと谷口が飛び込んだ新池、桜並木がある夙川公園。 朝比奈さんがトンデモ告白をしてくれたベンチもちゃんとあった。 同じだ。何も変わりがない。 こういう自然の風景にはさほど違和感を感じない。感じるのは人工の建物だけなのかもしれない。 そういえば俺の自宅はいったいどうなってるんだろう?昨日からずっと考えていた。 俺の知らないところで、俺を除いた俺の家族がそのまんま別の人生を過ごしているんだろうか? それとも家そのものがないんだろうか。 俺は自宅近くまで行って、そこから通学路を辿って北高まで行ってみることにした。 谷川氏は道順も場所も同じだと言っていた。 俺は線路を越えて自宅がある(と信じている)場所へ自転車を走らせた。 後ろに過ぎてゆくのは見慣れた景色だった。風景だけが同じ、そこにいる人間は誰も知らない。 猫は飼い主よりも場所に執着するというが、俺はどっちかといえばそこにいる人間に愛着を感じる気がする。 俺にとっての自分の居場所は建物や地理なんかじゃなくて、たとえばSOS団のメンツや、親や妹や、 シャミセンがまとわりついてくる日常。そんな他愛もない時間そのものなのだろう。 馴染んでしまったり忘れることが出来ないものというのは、特定の場所や風景なんかではなくて、 むしろ、そのとき誰かと触れた流れる空気みたいなものだ。 時間と空間は同じ、と長門は言っていた。今は少しその意味が分かる気がする。俺なりにだが。 馴染みの町内にたどり着いた。 俺は自転車にまたがったまま、前方にある俺の自宅っぽい地所を見つめていた。 そこに、まったく同じ、俺の家がある。どうしたらいいんだろう。 玄関を開けてそのまま、ただいまと中に入ってしまいそうだ。 俺は携帯をいじるふりをして、その場に自転車を止めた。 家の様子を見ていると、ドアが開いて誰かが出てきた。 まったく知らないオバさんだった。あわてて目をそらす。 不意に、俺の家に知らない人が住んでいる感覚に襲われた。 本当はそこにいるべきは俺なんじゃないか。 ドアから出てくるのは本当は俺のおふくろなんじゃないか。 俺は頭を振り払ってその思いを消した。 住んでる人は違うのに、なぜあの家はあんなに似通ってるんだろうか。 それだけが疑問として消えなかった。 そこから駅に向けて自転車をこいだ。制服を着ていないのがなんだか違和感を感じる。 甲陽園駅まで乗りつけた。こないだのマンションが見えた。 あのときは長門とはなんら関係ない赤の他人を呼び出すなどと、血迷ったマネをしてしまったが。 いつもはここで自転車を止めるんだが、今日はそのまま乗って坂道を登った。 この坂の勾配はハイキング並にきつくて、入学したての頃は入る学校を誤ったと後悔したものだ。 自転車だと階段のないルートを辿らないといけないので、さらにきつい。 俺はとうとう押して歩いた。こんなことならいつものように駐輪場に止めておけばよかった。 途中、短大と私立の進学校の前を通った。似ているっちゃ似ている。名前は違うんだが。 この微妙な、心理的な部分で納得がいかない類似が俺を不安にさせた。 さらに坂を登り、北高らしき建物にたどり着いた。よくよく見ると名前が西宮北高になっちまってる。 正門には生徒がいたので俺はそのまま通り過ぎて、坂を登りつづけた。制服が違うな。 敷地をぐるっと回って西門まで行こう。俺の予測が正しければ、そっちのほうが人は少ないはず。 途中で見上げると、部室棟らしき校舎が見えた。あれか。 俺たちの文芸部部室がどうなっているのか、ここからでは分からなかった。 今すぐ校舎の階段を駆け上って、あの部屋のドアを叩いてみたい衝動に駆られた。 夜になるのを待って部室棟に忍び込んでみようかとも考えた。 でも俺は自分を抑えた。忍び込んで捕まったりしたら谷川氏にとんだ迷惑をかけてしまう。 血迷ったアニメオタクが県立高校に侵入。そんな三面記事、俺も読みたくない。 結局、歩道橋の交差点まで登ってそこから南西に坂道を下る。 西側からは校舎の剥き出しのコンクリが見えるだけで、なにも分からなかった。 こんなことをやっていてもなにも得られないのは分かっていた。 俺が中に入れない以上、長門もそこには行かないだろう。 長門との接点は場所じゃないんだ。過去に二人が共有したなにかだ。 俺は来た道は戻らず、坂道をそのまま下り、回り道をして甲陽園駅に戻った。 ひとつだけ忘れていた場所があった。長門に呼び出されて待ち合わせた、駅前の公園だ。 果たせるかな、街灯の下にベンチはあった。このベンチにはいろんな思い出がある。 最初のは“午後七時、光陽園駅前公園で待つ”だったか。 あんときの俺は俗っぽい生活の代名詞みたいな人生で、 宇宙論やら時間論やらとは遠いかけ離れた生活をしてたからな。 もっとまじめに聞いてやればよかった。 帰ろうとする俺を見る長門の表情に広がる、小さな波紋。 今ならあの微妙な表情の意味は分かる。 部屋の一角に、時間ごと冷凍保存した俺を三年間待ちつづけていた。 ── ただ待っているだけの人生なんて嫌 そう言いたかったんじゃないか。 俺はベンチに座り、長門と出会ってからのことを思い返していた。 あいつをひとりにしてはいけない。それが俺がここにいる理由。あいつを追いかけてきた理由。 気が付くと四時を過ぎていた。だいぶ冷え込んできたので駅近くのコンビニへ行った。 俺はホットのお茶をレジに置いた。朝比奈さんの点てた暖かいお茶が飲みたい。 ものはついでだ、俺は店員に尋ねた。 「すいません。実は人を探してるんですが、ちょっと写真見てもらえないでしょうか」 レジの若い店員は珍しいものを見るように俺を見た。 「え……人探しですか」 俺は長門とハルヒが写っている写真を見せた。 おっさんたちに握り締められてだいぶよれよれになっている。 「身長は俺より低い、小柄な子です。名前は長門と言うんですが」 店員は遠目に近目に、しばらく写真を見ていたが、奥にいるらしい誰かに向かって声をかけた。 「店長、これ、前ここで働いてた子じゃないっすかね?」なんですとぁ!!? 「どれ……。どうだろ。覚えてないなぁ」初老のおっさんが出てきて写真を見た。 「ほら、例の、三年くらい前の事件」 「ああ、あの子か、思い出した。確か名前は田中とかじゃなかったかな」頭に乗っていた老眼鏡をかけなおした。 「ええと、田中は母親の苗字なんです。小さいとき両親が離婚して離れ離れになりまして。実の妹なんです」 とっさに口からでまかせを言ったが、我ながらもっともらしい嘘だったと思う。 「ああ。思い出した。セーラー服で突然やってきて、ここで働かせてくれと言った。やたら無口な子でね。 まあ連絡先はちゃんとしてたし、まじめな子っぽかったんで雇ったんだけど。 ワケアリみたいなんで詳しくは聞かなかったけどね」 「いつごろですか」 「働き出したのは四年か五年くらい前かなあ」 「あんまり大声じゃ言えないことだけど、……三年前に強盗が入ったんですよここ」若い方が声をひそめて言った。 そのときに犯人を退治したのがその子だったらしい。 「巴投げとか言うのかな、あの技?包丁を振り回す犯人をぶん投げて、こう!」店長が腕だけ実演して見せた。 「かっこよかったですよね。なんか合気道の心得があるんだとか言ってましたっけ」 巴投げは柔道だと思うが、そのトンデモでまかせは長門流かもしれない。 その後、テレビやら新聞やらの取材があったのだが、ふつとかき消すようにバイトをやめたらしい。 「翌日から来なくなってしまってね。思えば、あれが原因でやめたんだ。いい子だったのに残念だった」 「今どこにいるか分かります?」 「ずいぶん前のことだからね。隣の駅くらいに住んでるとは聞いてたけど、それ以外のことは覚えてないねえ」 「そうですか。もし見かけたらこの連絡先を伝えてもらえませんか」俺は谷川氏の電話番号を伝えた。 「ああ、いいよ」 長門の気配が急に濃くなった気はするが、まだ道は遠い。あいつ、ここで何をしていたんだろう。 食うためのしのぎ以外に、誰か知ってる人間が通りかかるのを監視していたのかもしれない。 少なくとも存在だけは確認できた。三年前という遠い過去のことだが。 俺はお茶を受け取ってコンビニを出ようとした。自動ドアにバイト募集の貼り紙がしてあるのに気が付いた。 俺はふと思い立って、店長と呼ばれたおっさんに尋ねた。 「すいません、これまだ募集してますか」 「ああ、いつでもしてるよ」 「自分もバイト探してまして、面接お願いしたいんですが」 「じゃ履歴書書いてきて。来週くらいでどうかな」 「できれば今日お願いできないでしょうか」時間が惜しい。俺にはそれがあまり残されてない気がする。 「キミも急いでるの?じゃあ六時ごろシフト抜けるからその頃来て」 俺はその場で履歴書とボールペンを買った。証明写真をどこかで撮らないとな。ああ、あと三文判も。 駅前の証明写真ブースで顔写真を撮り、喫茶店で履歴書を書いた。ここで六時まで時間を潰さないとな。 自分の顔写真を見て少しやつれていることに気がついた。このところ毎日出歩いてるからだろう。 写真を切るものがなにもないことに気が付いて、ウェイトレスに声をかけた。 「お姉さん、ハサミ貸して~」なんだかうちの妹みたいな口の利き方になってしまったが。 さっきの店員にどうもと頭を下げると事務所に通された。 「缶コーヒーでも飲む?」 「あ、いえ、さっき喫茶店で飲んだところなので」俺は履歴書の入った封筒を差し出した。 おっさんはうやうやしく履歴書を開いて読んだ。 「高校二年生ね。学校によっちゃバイト禁止なんだけど、キミんとこは大丈夫なのかな」 「ええ。一応申請するんですが、たいていは許可がおります。素行が悪くない限りは」 レジのほうから声がした。「店長、受け取りお願いします」 「ああ、ちょっと待っててね」おっさんが席を立った。 長門、頼む。俺に二十秒だけ時間をくれ。 俺はスチール机のいちばん下の引出しを漁った。 果たしてそれがそこにまだ残ってるのかどうか俺に確信はなかった。 何通もの古い履歴書の束を見つけ、下から順にめくった。 当たりだ、長門の履歴書だ。写真も丁寧な明朝体もあいつのものに間違いない。 俺は急いでバックパックに放り込んだ。 それからの俺はおっさんとの面接も上の空、話はほとんど聞いちゃいねえ。 もう、ただただ長門の直筆を手にしたという安堵感と、 早くくだらないおしゃべりを切り上げてこの住所に行って確かめたいという焦燥感とが、俺の頭の中を入り乱れていた。 礼もそこそこにコンビニを後にした。 俺の連絡先も電話番号もどうせニセモノだ。やる気になればこっちから電話すればいい。 長門の履歴書に書かれている住所は、確かに隣の駅に近かった。 偽名を使った長門が正しい住所を書くだろうかと疑問に思ったが、 今は考えるより確かめに行くほうが先だった。他に手がかりがないこの状況では。 俺はタクシーを止めて乗り込んだ。 長門有希の憂鬱Ⅰプロローグ 長門有希の憂鬱Ⅰ一章 長門有希の憂鬱Ⅰ二章 長門有希の憂鬱Ⅰ四章 長門有希の憂鬱Ⅰおまけ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1193.html
第12話『長門 有希 の憂鬱Ⅲ』 急に天井が爆発したかのような勢いで割れた。 誰かがライダーキック風飛び蹴りでブチ割ったようだ。 そいつは勢いを保持したまま俺に向かってナイフを構えて突進してくる朝倉を蹴飛ばす。 朝倉は凄い勢いで5mくらい吹っ飛び、鈍い音を立てて壁にぶつかる。 壁の表面が崩れ、朝倉は瓦礫に埋もれる。 目の前の奴は誰だ?! しかし、コンクリートの破片、砂、埃、蛍光灯の残骸などで俺の視界は塞がれている。 まったく見えん。 ……次第に視界が晴れていく。 俺は驚く。 「―――な、なんでお前が来るんだ?!」 そいつはふん、と鼻息を鳴らして大きな声で言う。 「助けに来てやったわ!あたしに感謝しつつ、せいぜい死なないよう頑張りなさい!」 そこに現れたのは――――黄色いカチューシャをつけた長髪のハルヒだった――― さっきまでの緊張感や、なぜかハルヒが来た事による安堵感でなぜか泣きそうだ。 目に涙が溜まっていて漫画的な表現で言うとウルウルしているんだろうな。 そんな表情をしている俺を見て、ハルヒは笑う。 「く、くくく……ぷっ、あんた、そんなにあたしが来たのがうれしいの?!」 ハルヒは大声で笑い出す。 違う……違うんだ、俺はだな……。 「ぷくくく……、わ、分かったわ、……じゃあ、まずはこの状況をなんとかしなくちゃね」 ハルヒは横を見やる。俺も見る。 朝倉が動き出している。 瓦礫から抜け出し、制服についた砂埃を手で払っている。 朝倉は手に持っているナイフをダーツのようにこっちへ投げる。 俺の顔の手前でハルヒはそのナイフの刃を直接掴んで止める。 ハルヒの手から血が出る。 おい、大丈夫か? ハルヒはナイフを投げ捨てた後、 「バカねぇ……大丈夫に……決まってるじゃない」 と言った。言い終わった時にはもう傷口は塞がっている。 俺はそれを見て、この世界のハルヒは 『対有機生命体なんたらかんたらインターフェイス』なんだな、と感じた。 「朝倉涼子、あんたはあたしのバックアップなんだから、勝手に動いちゃ駄目よ」 「いやだと言ったら?」 「あんたの情報連結を解除するわ」 「やってみる?ここはあたしの情報制御空間よ」 「……情報連結の解除を申請」 ハルヒはその性格に似つかわしくない小さな声でボソ、と言う。 その瞬間、空間がぐにゃり、と歪む。 まるでコーヒーカップにたらしたミルクだ。 これは……いつまでもコーヒーに混じらないミルクだな。ぐにゃぐにゃしすぎだ。 朝倉の周りの空間に黄色やら青やらいろんな色をミックスしている色が着き、 それが次第に圧縮され、一本の不透明な空間の槍が出来る。 その行為を朝倉が数回繰り返した後、それらがいっせいにハルヒと俺に向かって襲い掛かる。 しかし、それらは全てハルヒの目の前の見えないものに叩き落とされる。 ハルヒの目の前にはまるで見えない盾があるみたいだ。 叩き落とされた槍は空間と同化し、無くなった。 俺は、と言えば……ハルヒの後ろでそれを眺めていただけだ。 その後も朝倉の空間の槍攻撃は続き、ハルヒはそれを防ぎ続ける。 ハルヒの右手が後ろの俺にのびてくる。 「あんたは動かなくていいわ」 ハルヒは俺の右腕を掴み、自分の胸に抱き寄せる。 俺は後ろからハルヒを右手だけで抱くような姿勢になる。 俺の手の平にはハルヒの懐かしい柔らかさが。まさかこんなところで理性の出番が来るとは。 お、おい!なんか当たってんだが! 「……あんた、後で覚えてなさいよ」 お、俺は悪くねぇよ! ハルヒは依然として朝倉の攻撃を防ぎ続ける。 しかし、そろそろハルヒもきつくなってきたんだろうな。 「あんた、しっかり捕まってなさいよね」 ?……あぁ……。 俺は後ろからハルヒに抱きつく。 「ちょ、バ、バカ!どこ触って……ってあぁもうっ!」 喋っている間に地面から槍のような混沌とした色をしている棘が飛び出てきた。 ハルヒは物凄い勢いでジャンプする。 俺はハルヒに抱きつく手に力を込める。 仕方が無い。じゃないと落ちてしまう。 俺は必死に自己暗示をかけつつ、どんどんと離れていく教室の床を見る。 っておい!天井に頭を打ちつけるぞ!?――――ってあれ? 上を見る。何も無い。 いや、正確には何かあるんだろうな。遠くの方に。 それは俺にはなんだか分からん。なんだかこんにゃくみたいな色をしていて、 不味そうな色をしている。いや、食う気は無いが。 ハルヒは急にストップをかける。 そして、ハルヒは俺を空中へと突き離す。 落ちるぅう?! 「ごめん!こうするしか!」 俺は落ちながらハルヒを見る。 すると、さっきまで俺がいた場所に―――ハルヒに向かって何かが飛んでいく。 それはハルヒの胴体を貫く。ハルヒは宙ぶらりんになる。 俺はその事実を理解するのに数秒かかった。 地面に落ちる。あまり痛くない。……砂? 見回すと辺りは砂漠のような風景をしていた。 俺は上を見上げる。 そこにはなんと―――― 朝倉の右腕から生える光の筋のような鋭い触手が―――― ――――ハルヒの胴体を貫いていた。 「ハ……ハルヒッ!!」 俺は気付けば叫んでいた。 「ごめんねぇ……涼宮さん」 朝倉は嫌味に言う。 この野郎……。 朝倉は右腕を元に戻し、ハルヒを解放する。 ハルヒは俺の真横にドサ、という音を立てて落ちて来た。 俺はハルヒの肩を揺さぶる。 「ハルヒ!ハルヒッ!」 「大丈夫……に決まってんじゃない」 ハルヒの胴体に空いた穴から物凄い量の赤い液体が出ている。 その赤くて生暖かい液体が俺の制服を真っ赤に染める。 俺は世界が改変される直前にあった感覚を思い出す。 このままだと 今度 は ハルヒ と二度と会えなくなるような気がする――― ―――のだが、それは俺の単なる気苦労だったようだ。 目の前のハルヒは呟く。 「終わり、ね」 「何が?あなたの3年あまりの人生が?」 まったく、朝倉も朝倉だな。 俺は先の展開を知っているので、思わず笑みがこぼれる。よくやった、ハルヒ。 「どうやらそうみたい……」 「……は?!ハルヒ!しっかりしろ!」 「さよなら……」 ハルヒは静かに目を閉じる。 俺は絶望の淵に立たされた気分に陥る。 ハルヒがいなくなったらそれこそ俺の終わりだ―――ー 「なあんちゃって」 ハルヒは急にパッチリと目を開き、 「情報連結!解除!……開始っ!」 「そんな……っ」 その瞬間、朝倉の体が足元から砂になっていき、崩れていく。 「あなた……崩壊因子をあらかじめ仕込んでおいたのね……。 どうりで、あなたが弱すぎると思った」 「やっぱしあんたはあたしのバックアップなだけあったわ!うん、優秀! しかし!あたしには到底、敵うはずないわ!」 俺の腕の中のハルヒは軽やかな口調で言う。 いつの間にか胴体の穴が塞がっている。 こんにゃろ、騙してくれやがったな……! しかし、ハルヒの顔はキツそうだ。 朝倉がいろいろと喋っているが、一度聞いたことのある内容なので無視。 いつしか朝倉はほとんど消えかけている。 「それまで、長門さんとお幸せに。じゃあね」 最後のセリフだけは違うみたいだな。 「それじゃあ、不純物を取り除いて教室を再構成するわよ」 砂漠の風景から砂が取り除かれ、その代わりにいつもの風景が戻る。 教室には夕日が差し込んでいる。 俺と、俺の腕の中のハルヒはその夕日の真っ赤な光を浴びる。 窓から外の風景を見ながら呟く。 「きれい……だな」 「あ、あたしのこと……じゃないわよね?」 どんな勘違いだ。 「違ぇよ」 「っ!……思わせぶりな態度取らないでよねっ!」 俺は平謝りして、その場をやり過ごす。 ハルヒを見る。本当にハルヒだ。 「な……何よ」 いや、なんでもない。 俺は右腕を動かし、ハルヒを少しだけ深く抱き直す。 「あ……あたしはちょっと疲れちゃったからこのままなわけであって……っ!」 分かった分かった。 ハルヒは何かに気づいたように、胸元を探る。 「あ……ブラジャーの再構成、忘れちゃったわ」 急にニヤニヤしだすハルヒ。 もちろん、俺が返す言葉は決まっている。 「……してない方が可愛いと思うぞ。俺にはブラチラ属性ないし」 「ば……バッカじゃないのあんたぁ?!」 「すまん、妄言だ」 俺は笑いを堪える。 「そ、そう!………たま~になら……いいわ…………タイプだし」 返す言葉が見つからないのにバカという言葉を使わないという、 そのハルヒらしくない言葉が俺の笑いに拍車をかける。 もう、堪え切れん。 「ぷっ、あっはははぁ!」 「な、何で笑うのよぉ!」 その瞬間、谷口がドアを開ける音がする。 「WAWAWA忘れ物~っておぅあ!」 時が、止まった……ように感じる。 谷口は涙を堪えて、ネクタイを直し 「すまん。……ごゆっくりぃ!」 ドップラー効果を残しつつ、去っていった。 正直、谷口なんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのです。 なんて変な言い訳を考えつつ、俺は溜息をつく。 「大丈夫よ」 「何がだ?」 「朝倉は転校したことにするわ」 やっぱそっちかよ……。 次の日。 この水曜日はある意味、平和な一日だったと言えよう。 俺は今日も学校へ行き、普通に授業を受け、いつもどおりの日常を満喫した。 ただ、ハルヒがKYON団に入るとか言い出したのが非日常だったかな。 あと、谷口がいろいろとうるさかったので無視した。 「ねぇ、あたしもそのKYON団ってのに入れてよ」 ハルヒは昼休み中ずっと、俺の袖をぐいぐい引っ張ってやまない。 なんだかそこは長門っぽいな、と感じてしまう。 「長門に言ってくれ」 俺はそう答えたのだが、ハルヒは言って聞かない。なぜだ? しかし、ハルヒに上目遣いで見られるのもあれだな。 なんていうか……あんまりこういう言葉は使いたくないんだが………そそる。 結局俺を通して長門にその内容を伝えると、 「いい」 その一言で入団が決まった。 長門には名前しか伝えてないはず。 ……放課後になった。 部室に行って本を読むのがすでに日課になっている俺は、すぐさま部室へと赴く。 お、ハルヒが既に来ているじゃないか。本読んでるぞ。 ところでハルヒはいったいどこのクラスなのだろうか。 俺はそれが気になって仕方がないので直接訊いてみることにした。 読書をしている手を止め、 「なぁ、ハルヒ」 「何よ」 ハルヒもページをめくる手を休めた。 「お前って1年何組なんだ?」 「あ~、あたしはねぇ……6組」 やっぱ長門と入れ替わりか。 会話はほとんどそれだけだった。 そういや長門が団長ながらにお茶を入れてくれたりしたな。 さすがにあの人には及ばないか。 ……あの人?あの人って誰だっけ?名前忘れた。 メイド服が良く似合い、大きな胸がチャームポイントでありウィークポイントでもある、 あの2年の女子の先輩だ。 ……明日になれば思い出すだろう。 KYON団団長の長門の合図で部室が終わる。 帰りの道で古泉に会った。 閉鎖空間がどうたらとか言っていたが、俺は眠くて面倒だったので拒否した。 そしたら、機関の人間らしき人物がわらわら車から出てきて、 俺は拉致されかけたが、古泉が助けてくれた。 「あなたたち!僕のキョン団に何するんですか?!」って。 KYON団はお前のもんじゃないぜ、とかそういう感じのことを言ったら、 団 じゃなくて たん ですよ、とか言い出した。 意味が分からん。 団 だろ? さて、俺は今日も安らかに眠りにつける訳だが、 そろそろ俺の人生経験の中でもベストスリーには 入りそうなくらいの最大のイベントがやってくるはずだ。 そう、思い出したくもないあの事件だ。 あれは相手がハルヒだったから思い出したくないわけで、長門だったら大歓迎だ。 そういえば、この世界の長門は俺のことどう思ってるんだろうか。 好意はありそうな気がせんでもないな。 俺としてはあったら喜び、なければ落ち込む程度だが。 そんな甘いことを考えながら寝る夜は、当然甘かった。……気がする。 次の日。 朝から長門の反応がいつもと違うことに違和感と嫌な予感を覚えつつも、 それでも時は過ぎていく。 授業中は長門への違和感などなどについて考えていた。 ちなみに朝、長門はこんな反応をよこした。 「よぉ、長門」 「……」 無言でうなづく。ここまではいつもどおりだ。 「あなたは……わたしといて……楽しい……?」 この質問に違和感を感じた。 「もちろんに決まってるじゃないか」 「……そう」 もしかしたら、この返答が長門のあの空間を生み出すんじゃないか、と言う答えが出る。 俺は後悔すると同時に心配してくる。 もしかしたら『俺が長門といるのが楽しい』という返答を貰った長門は それ=『ずっと二人だけでもいい』という返答と受け取ったかもしれない。 ……なんてのは考えすぎか。 昼休みは、ハルヒが妙に絡んで来たのを覚えている。 そんなに俺の袖が気に入ったのか? 放課後。 長門はやはりどこかおかしい。 部室へ二人並んで歩いて向かっている途中で珍しく自分から話しかけて来る。 「……わたしは」 「……?」 「わたしは生まれてきて15年間、一度も友達を作ろうなんて考えたことなかった」 それから、長門の独白が始まった。 「……違う。 確かに、作ろうかな、と思った時期もあった。 世界には数え切れないほどの人がいる。 きっとわたしに合う人もいるんじゃないか、と。 そういう淡い期待を持っていた。 しかし、わたしに合う人なんていなかった。 わたしはわたしのことを理解してくれるひとを探してた。 でも、見つからない。 15年間、ずっとわたしはひとりで苦しんでいた。 この北高に入る頃にはわたしはもう一生を一人で過ごす決意をしていた。 でも、あなたの顔を見て、なぜかわたしはその決意が揺らぐ。 なんで。あなたの顔を見ると心拍数がわずかだけど上がる。 わたしはあなたに恋をしている気はまったく無かった。 入学当時、あなたも今までのひとと同じように 興味本位でわたしに話しかけてくる人だと思っていた。 でも、体は勝手に反応してしまっていた。脈拍がそれを教えてくれた。 そして、あなたの一言で気づいた。 わたしがあなたに……恋をしていたことを。 その一言はあなたがわたしに本のタイトルを訊いた一言。 心臓が止まる、と思うくらいどきどきした。 あなたは、わたしのことを理解してくれた。 だからわたしもあなたのことを理解したい、と思ったからKYON団を作った。 団長になれば自然とあなたとの接触も増える。だから、なった。 あなたがわたしを襲った時。 正確にはわたしが襲わせたのだけれど、あなたは嫌がる様子も見せなかった。 あぁ、彼もわたしのことを嫌なひとだとは思ってないんだな、と 感じて心の中ではすごく喜んでいた。 わたしはあの時の写真は今も大切にしている。 ……その写真で自分を慰めたりもした。 あなたが土曜日のわたしの誘いを受け取った時。 わたしはあなたにデートじゃない、と言ったけれど、わたしはその気だった。 できれば手を繋ぎたかった。 本当は図書館なんてあなたが退屈な場所なんかではなく、 遊園地……など、あなたと一緒に楽しめる場所が良かった。 だから、デートじゃないと言ってしまったことを物凄く後悔した。 あなたがわたしを自転車の荷台に乗せてくれた時。 わたしはあなたの背中に抱きついて、あなたの匂いを嗅いだ。 あれは、わたしの好きな匂い。 ……そうじゃない。 ただわたしが好きな匂いじゃなくてわたしが好きな人の匂いなんだ、と再確認した。 ……だから、この匂いは好きな匂い。 あなたの背中は広くて頼もしかった。 あなたがわたしの家に泊まった時。 わたしはものすごくどきどきした。 あなたを見ていられないほどどきどきした。 心臓がパンクするんじゃないかな、と思った。 一緒の布団に入ったときはとうとうするんだ、と思った。 でも、やっぱりあなたは……いくじなしだった。 朝起きてあなたをまじまじと見ていたらあなたが起きて、 わたしはすぐに眠っているふりをして、 あなたがどうするか見ていた。けれど、やっぱりあなたはいくじなし。 あなたが昨日涼宮ハルヒという名前を出した時。 わたしはすごく動揺した。 思わず入団を許可したけれど、本当は二人きりの時間が減るから嫌だった。 休み時間にあなたたちが話しているのを見て、ほんの少し、腹が立った。 あなたが今日の朝わたしに話しかけてくれた時。 わたしは決心した。あなたにわたしの気持ちを打ち明けよう、と。 じゃないと涼宮ハルヒにあなたをとられる気がしたから。 でも、この告白はもっと前からしたかった。 彼女はわたしにチャンスをくれた。だから感謝してもいい。 ……わたしは、ずっとあなただけを見ている。今までずっと。そして、これからも。 だから……」 長門は一息ついて、俺をしっかり見据えて言う。 「……好きです。わたしと付き合ってください」 さすがの俺でも次、どんな内容の言葉が来るかは分かる。 でも、驚いてしまう。 長門が俺に告白するなんて。 どう対応すればいいんだ?分からん。分かるはずも無い。 俺はこのような告白される状況は……ない、事も無いが……。 今はあの時と状況が違う。 俺は確かに長門が好きだ。 でもそれはこの世界の長門じゃなく、元の世界の長門であってだな。 俺はこの世界の長門に元の世界の長門の影を当てていた、というか。 この世界の長門も好きかもしれない。いや、好きだ。 でもこの世界の長門に「好き」という感情を抱くことを許すと、嫌な予感がするんだ。 好きだ。でも、好きでいちゃだめなんだ。 このようなことを直接長門に言えるはずもなく、俺はただただ、返答に困っていた。 だんだんと長門の表情が暗くなる。 俺がはやく返答をよこさないから、 俺がお前のことを好きじゃないと勘違いしているんだろう。 そんな焦りの気持ちから、俺はいつかと同じ過ちを繰り返す。 「長門、俺はお前のこと、嫌いじゃないんだが……」 この一言から始める癖があるようだ……。 ちくしょうッ!俺のヘタレ! 結局自分が嫌われたくないから優しい言葉をかけてるだけじゃないか! こんな自分に自己嫌悪する。 長門は嗚咽を漏らす。 次第に声をあげて泣き出した。 大粒の涙が長門の頬を伝う。 俺は必死になってその涙を止めようと、表面だけの優しい言葉をかけ続ける。 仕方が無いんだ、許してくれ、などとは言わん。 「好きだ」とか「愛してる」だとかの言葉が使えないだけで、 こうまで俺は無力なのか!? 目の前で泣いてる女の子一人の涙も止められないのか……っ!? 長門は何も言わずにその場を走り去る。 まるでその背中は―――― ―――俺に「着いて来るな」と言っているようで―――― ――――俺はその場に立ち尽くすしか無かった。 …………ごめん……長門………。 その後、俺は部室にも寄らず、家に帰った。 俺はその夜、一人で泣いた。 何を言えば正解だったのか、なんて答えは出るはずも無かった。 ただただ、長門の思いに答えられなかったことを悔やむ。 もしも、この世界が……本当の世界だったならば、どれだけ悩まずに済んだだろうか。 そんなことを考えながら、俺はいつの間にか泣きつかれて、寝てしまった。 ……きて……起きて……起きて……。 誰かが俺の頬っぺたをぺちんぺちんと優しく叩く。 ……もしかして?! 俺は体を起こす。 ……やっぱりか……。 長門が訊いてくる。 「ここはどこ」 「俺にも分からん」 俺は長門の顔が真正面から見れない。 あいつは俺の顔をまっすぐ見てくるのに。 「長門。ちょっと待っててくれ」 「……」 長門は無言で頷く。 俺は、校内を歩き回り、古泉を探した。 ……赤い玉すら出てこない。 パソコンがあるわけでもないのでハルヒとも連絡が取れない。 ……どうすりゃいいんだ……。 「僕はあなたに任せますよ」 「うぉ!?……古泉、いたのか。」 俺の背後に赤い玉が浮かんでいる。 「えぇ。今さっき来ました」 「時間は無いんだよな?手短に説明頼む」 「……分かりました。」 やっぱり時間は無いようだ。もうすでに赤い玉なのだから。 「どうやら長門さんは世界を変えようとしているようです。 ……あなたと二人きりの世界に、ですかね」 なんでだよ。 「おや、それについてはあなたが一番ご存知のようですが?」 ……そうかもしれんな。 「もう少し喜んではどうですか?あなたは神と選ばれ、唯一生き残ることが出来るんですよ?」 ……喜べるのか? 「えぇ」 二人だけだぞ?どうすりゃいいんだ。 「産めや増やせていいじゃないですか」 そりゃ……そうだが。 「ハハハ、もうその気でいるんですか?」 う、うるせぇな。 「僕としてはあなたに戻ってきて欲しいですねぇ。……まだしてないこともありますし。」 ……それはなんだ。 「それは、秘密ですよ。戻ってきたら教えて差し上げますよ?」 そうか、楽しみとして取っておいていいもんなのか? 「あなたにとっては分かりませんが、少なくとも僕にとっては」 ……やめとく。 「……それは残念です。……おっと、そろそろですね」 ハルヒから伝言は無いのか? 「あぁ、ありますよ。忘れてました」 ……内容は? 「『帰ってきなさい』……以上です」 またあいつもあいつらしい伝言だな。 「そうですね……では」 じゃあな。 「またな、と言って欲しいものです」 ……またな。 「……」 古泉は黙って消えていった。なんか後味悪いな。 ……さて。神人が出てきやがった。 校舎を破壊し始めやがった。 長門の元へと戻らなければ。 「おーい、長門!」 長門はその場でうずくまっている。 しかし、俺の声に反応し、体を上げる。 「……待ってた……あれは、なに」 「……わからん」 「……わたしには、あれが不安の塊に見える……」 俺は長門の手を引き、校庭目指して走る。 ……長門。お前はずっと不安だったのか? 俺と会うまでの15年間は、俺にはとてもじゃないが想像できるものじゃない。 だが、その積年の不安を俺は解消してやりたい。 しかし。しかしだな。 俺にはそれが出来ない……。 何度も考えていると自分への言い訳のように思えてくる。 言い訳でもいい。なんだっていい。 「俺は、元の世界の長門に会いたい!SOS団長のハルヒにも! ニヤケ顔が嫌で仕方なかったが、あの古泉にも! メイド服で可愛らしいあのお方にも会いたい! そこにこの世界へと改変しちまった有希もそこに加えてもいい! 俺はまだ、あの世界でやるべきことがたくさん残ってるんだ!」 「……?」 長門は意味が分からないようだ。 俺は後ろを振り向く。 神人が5,6体ほどであの時のように校舎を破壊し尽している。 ……俺は元の世界へと帰る方法を思いつく。 しかし、ギャンブル要素が多すぎる。 元の世界どころか、もっと大変な世界になってしまうかもしれない。 でも、それしか方法は無さそうだし、その方法をやるチャンスは今しかないだろう。 今を逃すと一生、元の世界へ帰れない気がする。 だから、俺は言う。 「長門、実は俺な、この世界の人間じゃないんだ。 お前は知らないだろうけど、その世界ではお前はいわゆる宇宙人なんだ。 まぁもっとも、宇宙人、なんて簡単な名前では無いがな。かなり長かったはずだ」 長門は驚く。目がいつもより見開いている。 「その世界では、俺とお前は付き合っている。いわゆる相思相愛ってやつか? だから、この世界のお前にあいつの影を合わせちまった。本当にすまん……。」 長門はさらに驚く。 気がつけば、俺と長門は校庭にいて、神人は校舎を破壊し終えかけている。 俺は立ち止まる。 「で、この世界とその世界は同じ世界なんだ。 俺は以前の世界に戻りたい。 でも、そうしたらこの世界は無くなってしまうことになるな。 それでも、俺は俺の世界に戻りたい。 ………俺の世界の 長門 に会いたいんだ!」 長門は俺の言葉を真剣な瞳で聞いている。 俺は長門の肩を掴む。 「……なに」 「俺、実は 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス 萌えなんだ」 「……」 「いつだったかの俺の世界でのお前の真っ白なワンピースは そりゃもう反則的なまでに似合っていたぞ」 「……そう」 俺は長門の肩を抱き寄せ―――キスをした。 その瞬間、いつかのような感覚が俺の身を襲った。 空気の波のようなものが俺に押し寄せる。 目の前が真っ白になり、無重力が俺の体を支配する。 そして、その無重力から解放され、地球のやさしめな重力が俺の体を押さえつける。 ……ここはどこだ? 真っ暗闇の公園。 ……元の世界に帰って来たのか? 「おかえり」 背後から聞こえる。 …… 長門 の声だ。 俺は振り向く。 「ただいま、長門」 そこには、 俺が好きだと胸を張って言える 長門が俺の目の前に立っていた。 ――――目に涙を浮かべて。 第12話『長門 有希 の憂鬱Ⅲ』~終~ キョン「次回予告! とうとう元の世界に帰って来れた俺!」 長門「本当に……よくやった」 キョン「長門!」ギュッ 長門「……次回の主人公は……わたし」ギュ キョン「……え?」 長門「……さみしかった」 キョン「……長門……」 長門「第13話『 長門 有希の憂鬱Ⅰ』」チュ キョン「……乞うご期待!」 次回は伏線を回収するぜ 第13話
https://w.atwiki.jp/post_map/pages/2136.html
(山口県)長門(久津)郵便局 郵便番号:〒759-46・〒759-47(元は(山口県)長門(宇津賀)郵便局が集配) 集配地域:山口県長門(ながと)市の旧・大津(おおつ)郡油谷(ゆや)町のうち旧々・大津郡向津具(むかつく)村域および旧々・大津郡宇津賀(うつが)村域。 1.jpg 久津郵便局局舎 2.jpg 久津郵便局取集時刻掲示 達成状況[20**年*月**日現在] 普通のポスト ●マッピング済**本。撤去**本。 コンビニポスト ●マッピング済**本。撤去**本。 ポスト考察 ●編集中 ポスト番号考察 ●編集中 設置傾向考察 ●編集中 取集時刻考察 ●編集中 取集ルート考察 ●編集中 時刻などの掲示 ●編集中
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2639.html
長門有希の憂鬱Ⅰ 二 章 目の前に、口をあんぐり開けたおっさんがいた。 よれよれの服を着てベンチに座っている。 「あんた……今、そこに現れなかった?」前歯が一本欠けている。 「え……ええ」 「ワシゃずっと見てたんだが。あんた、そこに、いきなり現れた」 「そうですか……?たいしたことじゃありません」人がいきなり出現したなんて全然たいしたことだろうよ。 ホームレスっぽいおっさんは俺をまじまじと見つめていた。 やがて飽きたのか、目を閉じ、うとうとしはじめた。 ここはいったいどこだろうか。俺は目をこすって周りを見た。 ほっぺたをパシパシと叩いてみた。これは夢じゃない。人が大勢歩いてる。閉鎖空間でもないようだ。 どこからか列車の発車を告げるアナウンスが聞こえた。どうやら駅のコンコースらしい。 駅の名前は見慣れない、俺の知らない地名だった。 さて、これからどうするかだが。長門を探さないといけない。 俺は携帯を取り出して長門にかけた。話中の音が鳴りっぱなしで、画面を見ると圏外になっている。 「こんな繁華街で圏外か!?」 しかたないので公衆電話を探した。 ── おかけになった電話番号は、現在使用されておりません。 なんてこった。そんなはずがあるか。長門が引っ越したりするもんか。 携帯は登録されていない状態だと圏外表示になるのだということを後になって知ったのだが、 思えば、安易に電話なんかかけて簡単に見つかるだろうと思っていた俺も浅はかだった。 おかしいと思って公衆電話から自分の携帯にかけてみて、やっとそれが分かった。 ところで今はいつだ。俺はおっさんに声をかけようとして、その向こうにキオスクを見つけた。 新聞を買いに行った。ふつーによく知られている全国紙だ。 日付は合っている。俺はてっきり七月七日にでも飛ばされたのかと思っていたが。 まあ気温がそうじゃないことはすぐに肌で分かった。 時間は……と。噴水の前にあるでかい時計が午前十時を指していた。 俺の腕時計はまだ深夜二時だった。時計を十時に合わせた。 俺は切符売り場に向かった。ここがどこであれ、いったん地元に戻らないとな。 自動券売機のコーナーでちょっと立ち止まった。JRの路線図に俺の地元が載ってない。 そんなに遠方にいるのか俺は。飛行機で行ったほうが早いかもしれないな。 俺はみどりの窓口で行き先を告げた。 「お客様、ええと、そういう名前の駅はないようなんですが。何県になります?」 窓口の駅員が怪訝な顔をしてこっちを見た。 俺は地元の県名を告げた。 「あの、その県にはおっしゃる駅はないんですが……。路線名は分かります?」 ちょっと待った。なにか妙な雰囲気だぞ。いくらなんでも駅員が知らないなんてことはあるまい。 「すいません、ちょっと調べてきます」俺はあたふたとその場を去った。 路線を地図で調べたいんだが、どこかに本屋でもないだろうか。 駅を出て数分うろうろしているとネットカフェの看板が目に入った。 ちょうどいい。眠気覚ましにコーヒーでも飲もう。 ネットカフェに入り、チケットを買ってパソコンの前に座った。困ったときのぐーぐる様である。 GoogleMapで駅と地名を検索してみた。存在しない。ありえん……。 県名までは出てくるが俺の地元がない。地図上では別の名前になっていた。 もしかして最近流行の市町村合併か?いきなりそれはないよな。 それから知っている地名、建物、百貨店なんかを手当たり次第に検索したがいっこうに出てこない。 北高がない。いくらなんでも県立高校がなくなるなんてことはないだろう。だが存在しない。 俺は思い当たるもので検索できそうな単語を必死に入力した。 その影でなにかがささやく。この状況はもっと根本的なところでおかしい、と。 地元がないということは、つまりハルヒはじめSOS団のメンツ全員がいない。 おそらく俺の家もなく家族もいないということだろう。 前みたいに、少なくとも別の人生を歩んでいるあいつらがいてくれたら、長門もそこにいるかもしれないのだが。 その希望もあっけなく消えてしまうだろうと気が付いた。 暴走したときの長門を思い出して背筋が寒くなった。 日本の国土を書き換えるなんて、まさか長門……お前がやっちまったのか。 俺はその場で凍りついたまま動かなかった。 ハルヒといえば、そうだ。あの文庫本だ。 ずっと手に持っていたはずなんだが、どこにやったんだろう。 入れたつもりはないんだが、バックパックの中にあった。 「手がかりはこれだけか……」 俺はパラパラとめくってみた。さっきやったように読み返してみたが、今度は何も起らない。 初版の日付が未来にずれているだけで、ほかはいたって普通のラノベだ。 俺の知ってるやつらが出演している以外は。 しばらく腕を組んで考え込んだが、どこから考えればいいのかまったく分からない。 冷めたコーヒーを飲み干して、俺はバックパックをかついだ。 ウェブブラウザを閉じる前に、俺はやっと事件の糸口を掴む単語を入力した。 これを最初に気が付かなかったのは、やっぱり俺は推理小説やミステリーには向いてないからだと思う。 “谷川流。たにがわながる、ライトノベル作家。兵庫県在住” 真っ暗闇のなか、はるか遠くにかすかに小さな光が見えた。 一時間後、俺は新大阪行きの新幹線に乗っていた。 高速で走る車両の心地よい揺れを感じながら、いくつか分かったことを考えていた。 日時はずれていない。俺のいた日付と一致する。 だが俺の住んでいた町がない。つまり家も、北高も、SOS団のメンツもいない。 ひょっとすると日本のどこかで、俺とは接点のないまったく別の人生を歩いているあいつらがいるのかもしれないが。 この世界に存在する谷川とかいう作家が唯一の手がかりだ。接触してみれば何か分かるかもしれない。 まさか自宅に押しかけるわけにはいかないが、ちょうど書店でサイン会をやる予定らしい。 俺は自分の素性を明かすかどうか迷ったが、その結果がどうなるかは予想できないので、 とりあえず今は考えないことにした。 眠気に誘われてうとうとしはじめた。考えてみればあまり寝ていない。 夢うつつの中、俺は数時間前、部室であったことを思い返していた。 俺は深々と冷える部室で椅子に座り、(念のため長門が座っていた椅子を窓際に持っていってから)文庫本を開いた。 内容は古泉が言っていたとおり、俺が書いた風な文体で、俺の視点から見たSOS団の懲りない面々の話だった。 ページをめくる手がやや震えていた。 俺が言うのも変だが、話としてはなかなかに笑える。 古泉が実はアレだったとか、ピンチで鶴屋さんに助けられるとか、ハルヒの意外な一面とか。 まあフィクション、ノンフィクションは別として。 というかSOS団みたいな超こっけいな集団だから、なにを書いてもネタになるだろう。 確かに登場人物には、俺の知ってるメンツは出てくる。端役とも言える俺の妹とシャミセンすら出てくる。 だがエピソードは作られた話だ。季節が時間的にずっと先の話になっているし、こんなネタはまずあり得ない。 これはつまり、俺の知らないSOS団の話じゃないか。そうとも思える。 ページをめくる手が、本の半ばにかかった頃、次のエピソードに移った。 その冒頭を読んだ瞬間、俺は目を疑った。 “「不可解な現象が起こりました」 部室に入るなり古泉がしかめ面をして見せた。” 同じセリフを数日前に聞いた。同じ場所で。 さらに長門が消えて、喜緑さんがやってきて、長門に何があったのかと尋ねる。 俺が見たのと同じ行程がそこにあった。 で、その二日後に俺は長門の夢を見て、古泉に電話して……部室に来て。 文庫を開いている俺がいる。 「俺が読んでいる本を俺が読んでいる!」いやまて、その俺を読んでる俺が読んでいるわけで、 ああっもう無駄にややこしい。 これじゃまるで二枚の鏡に写る自分じゃないか。 こんな頭痛しそうな無限ループの設定を考えたのはいったい誰だ。 そこで俺が次のページをめくると、 “そこで俺が次のページをめくると、そこで俺が次のページをめくると、そこで俺が次のページをめくると、” めくると、そこにはただ、挿絵でナスカの地上絵にあったような象形文字が。 いつだったかハルヒと俺が東中のグラウンドに描いた、あれだった。 これの意味は確か、「わたしは、ここにいる」 その言葉をなにげなく口に出した、次の瞬間。周りがぼうっと明るくなった。 俺だけが光の球の中にいるようだ。 「長門……もしかしてこれか?」お前が遭遇したのはこれなのか。 周囲は音もなく静かで、塵ひとつ舞わない。長門が消えたときのような、嵐のような衝撃は起こらなかった。 ただ、なぜか俺以外の時間がゆるやかに巡っているような感覚はあった。 部室の様子がホワイトアウトし、よくは見えないが別の風景が見えてきた。 数十秒か数分間か、意外に長かったその白い光も徐々に消えた。 喧騒のノイズが一気にボリュームを上げて耳に入ってきた。俺は人ごみのなかにいた。 目の前に、口をぽかんと開けたおっさんが座っていた。 そこで目が覚めた。時計を見ると、最初の駅を出てまだ十分しか経っていない。 新大阪に着くまで、もう一眠りすることにした。 新大阪で降りて在来線に乗り換え、大阪駅まで行った。 数時間座りつづけていた俺は腰を伸ばした。 駅のホームに降り立って、なぜだか分からないが安堵に似たものを感じた。 喧騒と排気ガスと適度に汚れた空気がそこに生きる人たちの存在を感じさせる。 谷川氏のサイン会は明日だ。それまでどうやって時間を潰すか。 とりあえず書店の下見でもしておくか。俺は地下街を通って梅田駅に向かった。 ── 谷川流先生サイン会 午後二時~。あらかじめレジにて整理券をお求めください 店頭のイベントパネルにそう書かれてあった。 「すいません、明日のサイン会の整理券ってまだあります?」 「えっと、もう残ってなかったんじゃ……。 あ、お客様、一枚だけありますわ」 「ほんとですか、くださいください」 「最後の一枚です」 レジのお姉さんのスマイルのまわりに白く靄がかかっているようで、俺には天使のように見えた。 幸先がいい。運が俺に味方しているようだ。 「漫画か小説をお買い求めいただけますか」 「ハ、ハイッ」俺は喜々として言った。もう何冊でも買って差し上げますよ。 そこにあったものは……。 「な、なんじゃこりゃ!!」 店員と、その場にいた客の全員がこっちを見た。 平積みのテーブルに、小説、漫画、DVD、販促用のノボリ、ポップ、ポスター、すべてにハルヒがいた。 書店の一角を埋め尽くす、涼宮ハルヒコーナーとでも表現しようか。 そのときの全員に見られた俺の唖然とした表情は、まったく名状しがたいものだっただろう。 「お客様、どうかなさいました?」 「え、いえいえなんでもないです。すいません」 古泉、あのときお前の言ったことは正しかったかもしれん。こりゃまさに神扱いだ。 俺はとりあえず小説を片っ端から一冊ずつ重ねて、ろくに数えもせずレジに向かった。 俺は店員に尋ねた。 「あの……すいません、涼宮ハルヒってどれくらい知られてるんですか」 「ご存知ありません?去年アニメで大ブレイクして、おかげさまで在庫が足りないくらいですよ。 小説の発行部数が二百七十万部とか聞いてます」 「……」 これはどういう現象なんだ。ハルヒ、お前、いったいなにやらかしたんだ。 考えろ俺、この世界には俺の住んでる地元がない。なのにハルヒは存在する。これはどういうこと? 俺の世界のハルヒとこっちの世界のハルヒとは根本的に存在が違う。 アニメとか小説の類ってのは、つまり、こっちでは“架空の人物”だ。 こっちのは作られた人格で、たぶんそこにいる俺もそうだ。長門も朝比奈さんも、古泉も。 喜緑さん、あなたの言っていた未知の世界ってこれだったんですか。 この謎を解くにはどうしても谷川氏に会わなくてはならない。それが鍵だ。 俺は買い占めたハルヒ小説をバックパックに無理やり押し込んで書店を出た。 レジのお姉さんに、ここから近いネットカフェを教えてもらった。 もう一度振り返ってラノベ、いやハルヒコーナーを見たが。 どう見ても違和感を感じるくらいに派手だ。 このありさま、ハルヒのやつ、まさか他所様の世界にまでちょっかい出したんじゃないだろうな。 思えば、この世界は俺のいた世界とはなにか空気が違う。 化学的に言うO2やCO2ではなくて、雰囲気というか。 曖昧だがなにかこう安心できない、殺伐としている、といったほうがいいだろうか。 俺のいた世界ではこの感覚はなかった。どこへ行こうが、自分がそこにいるという感じがあった。 俺はこっちに来て自分の希薄さを感じている。 そんなことをあれやこれや考えつつ歩道を歩いていると、 百貨店の前を通り過ぎてからなにかがひっかかった。 目の端でずっと妙な既視感を感じていたのだが、ふと足を止めて後ろを振り返った。 この風景は前にも見たことがある。 そうだ、忘れもしない閉鎖空間。いや、閉鎖空間の入り口というべきか。 朝倉が消えた次の日、古泉にタクシーに乗せられてどり着いたのが、ここだ。 若干風景が違うような気はするが。建物の形、配置は似ている。 あのとき目に焼きついた映像は忘れもしない。 今、俺の目に映っている風景、これにどんな意味があるのかしばらく考えていた。 俺はなにかに押されるように横断歩道を歩き出した。 ここだ。ここで古泉が立ち止まり、こう言った。 ── ここまでお連れして言うのも何ですが、今ならまだ引き返せますよ。 すぐ連れ戻してくれ、今の俺ならそう言いたい。 青の信号が点滅をはじめる。俺は目を閉じて数歩を進んだ。 ……なにも、起らない。クラクションを鳴らされて俺は歩道まで走った。 なにやってんだ俺は。ここがもし閉鎖空間の入り口だったとしても、俺は超能力者じゃない。 だが俺の中にはなにかあきらめきれないものがあった。 ここと向こうの世界に、なにかつながりのようなものが欲しかった。 それから三度、同じ横断歩道をいったり来たりして、結局はあきらめた。 あきらめた後も、しばらく歩道でたたずんでいた。 知っている風景に、やっとひとつめぐり会えた。それが異空間への入り口だなんて、あまりに皮肉すぎる。 やっと出合った知った風景。歩きながら何度も振り返りつつ、俺はネットカフェに向かった。 チケットを買ってパソコンの前に座った。客は少ない。 俺はバックパックからハルヒの小説を取り出した。数えてみたが十巻もある。 憂鬱、溜息、退屈、消失……。しっかしまあ、SOS団によくこれだけのネタがあったもんだ。 憂鬱から読んでみたが、どれも俺が知ってることばかりだ。当然っちゃ当然、俺が出てるんだからな。 ハルヒとの出会いも、SOS団設立のいきさつも俺の記憶どおりだ。すべて一致する。 一致するどころか俺の口調やら性格やらを完璧に表現している。 どうやったらこんなことが可能なんだろう。情報統合思念体みたいなやつが二十四時間監視でもしてたのか。 だが昨日読んだ十三巻だけは別だった。これの内容はまったく記憶にない。 俺はウェブブラウザで、困ったときのぐーぐる様を呼び出して、十三巻のタイトルで検索してみた。 検索結果 0件。やっぱりな。まだ存在するはずがない本のタイトルが出てくるわけはない。 俺はハルヒの名前を入力してみた。数十件くらいは出てくるだろう。 ── 涼宮ハルヒ の検索結果 約3,720,000件 さ……さん……ありかよ!思わず声に出してそう叫びそうになった。ハルヒだけで三百七十二万件だと!?。 あいつはこの情報社会を征服するつもりか。 ── 長門有希 の検索結果 約947,000件 ── 朝比奈みくる の検索結果 約677,000件 ── 古泉一樹 の検索結果 約152,000件 俺はもう笑いが止まらなかった。お前ら、こんなところにいやがったのかよ。 俺はそれで安堵したというか、あきらめの境地というか。みるみる顔がゆるんでいく。 すべては妄想の産物で、現実の場所を探していたのは間違いだったわけか。 俺は我に返った。長門は現実にいるはずだ。この九十四万件余の中に必ずいるはずだ。 いたとしても探し出すのは至難の業にちがいないが。 長門有希とは-はてなダイアリー、長門有希フィギュア、長門有希の百冊、長門有希同盟?なんじゃこりゃ。 無数のうちの五十件目くらいだったか、ひとつだけ気になるサイトがあった。 ── 長門有希の中央図書館 図書館か。外観の写真が載っていた。俺と長門が訪れたアレに似ている。 もし長門が俺を待っているとしたら、図書館周辺になにかを残しているかもしれない。十分考えられる。 この図書館どこにあるんだ?……西宮市か。 なにかが閃いた。俺はバックパックを担いですぐさま店を飛び出した。 コーヒーもネカフェのチケットもどうでもいい。 今すぐ、図書館へ。そこになにかがあるはず。長門はそこにいる。頼むからいてくれ。 俺は梅田から電車に飛び乗った。行き先は西宮。路線図を辿ると西宮北口と書いてある。 「これ……あの北口駅か?」 俺の知ってる鉄道会社とは名前が若干違うが、車両も知っている、このアナウンスも耳慣れている。 なんとなくではあるが、見慣れている気がする風景が車窓を流れていく。 俺は狂喜した。俺の地元はすぐそこだ、確信があった。 「北口だ!北口駅じゃないか!」 改札を出た俺はまるで、独裁政権下の圧制から亡命してきて飛行機から今降り立った市民のように 地面にキスでもしそうな勢いだった。消えたわけじゃない、名前が違うだけで実在するんだ。 目の前に広がるこの空間、ここでSOS団のメンツが集合し、喫茶店に入り、遅れて来た俺が毎回勘定を払う。 「遅い!罰金!」 そこにハルヒがいて、相変わらず制服しか着てこない長門がいて、美しく着飾った朝比奈さんがいれば、 いつもの俺の生活圏じゃないか。 まあ爽やかスマイルの古泉はどうでもいいんだが、いてくれたほうがいい。 駅前の小さな書店で市内の地図を買った。 縮尺が小さくていまいち分かりづらいが、地名を知る程度なら十分だ。 北口駅、甲陽園駅、路線名と駅名は違うが確かにある。 つまり、俺の知ってる人物はいないが、施設や建築物はある、ということになるな。 俺はこの空間のどこまでが俺の現実と一致しているのかを確かめることにした。 駅前公園から北へ数分歩く。果たしてそれは、あった。ドリーム! 忘れることがあってたまろうか。厳しい小遣いのなかからこの店につぎ込んだ飲食費は相当なものだ。 そういえばここで喜緑さんがバイトしてたこともあったな。とりあえずいつものように俺はドアをくぐった。 内装は若干違う気がするが、同じ焙煎コーヒーの匂いがして少し安心した。 いつものテーブルにつくと店員がやってきた。 顔をまじまじと見てみるが、俺には見覚えがない。 「いらっしゃいませ。お客さん、もしかしてハルヒ見ていらしたんですか」 俺が手にしている文庫本を見ながら言った。 「え…ええまあ」いつも来慣れていて馴染みの客のつもりだったが、今回は冷や汗ものだった。 俺がキョン本人だなんてとても言えない。それに俺はアニオタでもないから。 そう。この席だ。SOS団一同、市内不思議パトロールと称してただその辺を練り歩いただけの一日。 結局ハルヒが何をしたかったのか、俺にも分からん。 一度は朝比奈さんと既定事項作りに奔走したが、あれはハルヒの知るところではないはず。 コーヒーをすすりながらそんなことを思い出していた。味も香りも同じだった。 とりあえず閉鎖空間の入り口と、北口駅と、この喫茶店。 若干風景が違うものの、知っている場所が存在することは分かった。俺の既定事項はまだあるはずだ。 そうだ。図書館に行こう。 時計を見ると四時を回っていた。あまりゆっくりもしていられない。 西宮中央図書館、ウェブサイトにはそうあった。 名前は似ているが果たして俺の知るままで存在するのか。 北口駅から南西に向かって歩く。 このコース、第一回市内不思議パトロールのとき、長門と歩いた道だ。 しかし考えてみれば、市立図書館といえば北口駅のすぐ真北のビルに支所があるのに、 なんでわざわざ中央図書館まで歩いたりしたのか、我ながら不思議だ。 歩いていくと、ところどころで知っている建物は見かけた。ジロジロと見るのはまずいのでさりげなく通り過ぎた。 俺は気付いた。似ている、と、まったく同じ、とは違う。 この、部分的に似ていてその他は違うという地理、街の景観はいったい何なのだろうか。 誰がこれを作ったのだろう?。長門なら納得のいく答えを持っているかもしれない。 図書館に着いたのは五時過ぎていた。 ここから北に十分くらいのところに駅があったのだが、途中になにかヒントでもないかと思い、延々ここまで歩いた。 俺の知る図書館と外観は同じだ。中に入ると暖房の効いた部屋が俺を迎えた。人は空いていた。 さてこれからどうしたものかと、周りを見回した。長門らしき人影がいないかと、 書架をうろうろしてみたが、まったく見当たらない。歩き疲れた俺は椅子に腰かけた。 あのとき、長門に貸し出しカードを作ってやったんだったな。 俺は立ち上がって、あのときと同じ、“学校を出よう”を探した。 それから居眠りをし、マナーモードにしていた携帯に起こされたんだ。 ポケットから携帯を取り出してみたが、圏外表示は変わらない。 “学校を出よう”は離れたところで見つけた。知っているはずの文庫小説のコーナーは別の棚になっていた。 記憶喪失の患者が、記憶を取り戻しつつある状態になると、それを失う前にやっていた同じ行程を辿る。 今の俺はまさにそんな感じだった。 これから何をすればいいのか考えていなかった。考えるより先に足が進んでしまう俺の悪い癖だ。 俺は出入りする人をじっと観察することにした。万が一、知っている顔が通るかもしれない。 この時期、受験が近いからか学生が多いようだ。 腕組みをしてしばらく眺めていたのだが、ついうとうとし、気が付くとそろそろ閉館時間が来ていた。 携帯には起こされなかった。 俺はバックパックを背負って、持っていた文庫を棚に返しに行こうとした。 文庫小説の棚の前に、きゃしゃなセーラー服の後姿を見た。 「な、長門!」つい叫んでしまった。 肩に手を触れてしまい、そして振り返ったその子は、メガネをかけ、短髪で風貌は似ているのだが長門ではなかった。 「あ……すいません。人違いでした」 女子高生は顔に縦線を入れて俺を見ていた。ちゃうって、俺アニオタじゃないって。 俺は顔から火が出そうになり、そそくさとその場を逃げ出した。 俺は寝ぼけていたんだと思う。 閉館のアナウンスが流れた。時計の針が七時を指した。俺は図書館を後にした。 長門、俺がやってることは間違ってないよなぁ?なあ? 図書館で見知らぬ女子高生に話し掛けるなんて、どう見てもナンパです。本当に。 俺は間違っていないんだと、無理にでも自分に言い聞かせつつ図書館を後にした。 これで既定事項は四つ目か。 来た道を戻らず、まっすぐ北に向かって歩き、夙川駅までたどり着いた。 ここまで来たんだ、どうせなら本拠地に行こう。 そう、甲陽園駅に。その名前からして、どう考えても光陽園駅じゃないか。 俺は電車に乗り込んだ。下り線はもう帰りの通勤客でいっぱいだ。 車窓の外はもう日が暮れていた。俺は見慣れた風景が見えないかとじっと外を見ていた。 桜並木がある川沿いの公園は分かった。 朝比奈さんからトンデモ告白をされて、ハルヒが時期はずれに花を咲かせてしまったあの公園の桜だ。 甲陽園駅に着くと、登り電車になり、学生の姿をちらほら見かけた。 大阪駅、西宮北口、甲陽園駅と辿るにつれて、俺の郷愁がうずく。少しずつ核心に近づいている気がする。 だがそいつらのは見慣れない制服だった。 駅を出て坂道を登る。 そう、俺が目指しているのは長門の住む、もしくは住んでいるはずのマンションだった。 ちゃんとある。マンションが見えたが、若干違う気がする。玄関口は似ているが。 四年前の七夕の日、そのときの長門は初対面の俺と朝比奈さんを迎え入れてくれた。 誰も頼れる人がいない、見知らぬ場所(厳密には時間だが)で長門に会ったとき、安堵の溜息が出たものだ。 正直、長門がそこにいるとは思ってはいなかったが、俺は一縷の望みにかけた。 俺はオートロックのインターホンで七〇八を押した。この馴染みの番号を押すのは何度目だろう。 「宅急便です、斉藤さんちはこちらでよろしいでしょうか」 スピーカーから聞こえてきた怒鳴り声は、長門の声とは似ても似つかないものだった。 「ちょいとアンタ!またオタクの人!?いいかげんにしないと警察呼ぶわよ!」 「スイマセン!」 なんだなんだ、宅急便が嫌いなのか?俺はそそくさと退散した。 アニメオタクとは人聞きの悪い。 えーとつまり、長門がここに住んでると思ってるやつがいて、 ここの住民はそいつらのいたずらに迷惑しているということか?。 ここのインターホンにはカメラが付いてたんだった。うかつだったな。 せめて配達員らいし帽子でも被るべきだった。 さっき怒鳴られた声で一気に疲れが出た気がする。腹も減った。とりあえず大阪駅に戻ろう。 いつもの俺ならこの時間に登りの電車に乗ることはないんだが、下校する学生に混じって梅田駅を目指した。 俺の北高はこっちではどうなってるのか確かめたいところだったが、今日は撤退することにした。時間も時間だ。 それに今晩どこに泊まるか考えないといけない。 午前中に行った二十四時間営業のネットカフェで深夜パックを買おうかと思っていたのだが、甘かった。 「お客さん、学生さんよね。ごめんねー、十八才未満の人、十時以降はだめなんだよねぇ」 「あ、そうなんですか……。あの、実は今日行くところがなくて……。一晩だけお願いできませんか」 俺はすがるような目でレジのおばちゃんを見つめてみた。 「ごめんねぇ。最近、青少年条例とやらが厳しくてね。夜たまにおまわりさんが巡回してくるのよね。 未成年を泊めたことがバレたら営業停止させられちまう」 俺のために営業停止に追い込むわけにはいかない。これ以上は頼めなかった。 となると、あとはまっとうな宿泊施設か。まっとうと言ってもそんな高い料金は払えない。 風呂に入るのもいいかと思い、カプセルホテルに入ってみた。 「あー、お客さん身分証とかある?十八才未満はだめなんだわ。ジョウレイよジョウレイ」 「はぁ。そうなんですか」ここもだめか。 残るは観光ホテルだが、この辺の高級ホテルは一泊二万くらいはするだろう。そんな金額とても払えない。 こうなりゃ野宿するしかないか。この寒風吹きすさぶ師走にか?。 二十四時間のファミレスとかで時間を潰してもかまわないんだが、それこそ補導されてしまう。 そんなことになったら身元を証明するどころか、病院送りにされるのがオチだ。 アッチの世界から来ました、なんてとても言えない。 駅ビルのハンバーガーショップで晩飯を食いながら、これからのことを考えた。 もしこのまま長門が見つからず、向こうの世界に帰ることもできなかったら。 簡単にあきらめるわけにはいかないが、これが長期戦になるんだとしたら、 とりあえず食っていくことを考えないといけないかもしれない。しかし住むところもないしな。 ドヤ街でしばらく寝泊りして、学生OKなバイト先を探して、なんて柄にもないことを考えていた。 俺はMサイズのコーラをズルズルと飲み干して店を出た。 駅周辺をあてもなく歩いていると、ガード下に段ボールのかたまりを見つけた。 ホームレスが住んでいるらしい。あれ、借りようかな。 ちょっと躊躇したが、贅沢は言ってられない。 俺は一度、駅ビルに戻った。荷物を全部コインロッカーに預け、身軽にしておく。 財布から札を抜き取り、二~三千円だけ持っておく。 手土産にコンビニで酒とつまみを調達したいんだが、未成年の俺に売ってくれるだろうか。 客が多いコンビニを選んで入った。缶ビールを数本、袋のつまみ、弁当をカゴに入れてレジに並んだ。 店員はチラと俺を見たが何も言わなかった。 どう見ても十八才未満なのにな。汚れた格好してたから見逃してくれたのか。 うす暗いガード下に行った。 電車がひっきりなしにガタゴトと音を立てている。こんなとこでよく眠れるよな。 ホームレスは数人いるようだ。リヤカーに畳んだ段ボール箱が山積みしてあった。 あれを一枚だけ分けてもらおう。 俺は多少はマシそうな格好をしているホームレスのおっさんに話し掛けた。 「あの、スイマセン」 ちょっと怖かったが、ここで寝るにはどうしてもホームレスの許可がいりそうな気がした。 「なんだぁ役人か!ワシはここから動かねーぞ!」 「いえ、違うんです。段ボールを一晩貸してもらえないかと」 「ワシの家を貸せだと?どこの馬の骨か知らんテメェに貸すような──」 「差し入れもあります」俺は缶ビールを差し出した。 それをまじまじと見て、おっさんは考え直したようだ。 「ガハハハ。まあ座れ。あんちゃん、家出か」おっさんは歯の抜けた口を大きく開けながら笑った。 「いえ。家に帰りたいんですが、今日は泊まるところがなくて」 「そうかあ。ま、人生にはそういう日もあるわなぁ。とりあえず飲め」 「はい。いただきます」俺は正座して自分が買ってきたビールを飲んだ。 ほんとは飲めないんだが、付き合っていたほうがよさそうな雰囲気なのと、 正直酔っ払いたい気分でもあった。 「あんちゃん、正座なんかしねーで足くずせよ。ミカーサ、スカーサって言うだろ」 このおっさん南米人か。 おっさんとぼそぼそと話しているとまわりのホームレスが集まってきた。 「サンちゃん、珍しくお客さんかい。もしかして息子かい?」 「子供がいたなんて初耳たぜサンキチ、おめー隅におけねーな」 「女に縁のないワシに息子がおるわけなかろうがバカタレ」おっさんは唾を飛ばして怒鳴った。 「で、あんちゃん、親父と喧嘩でもしたんか?」おっさんは俺の肩を叩いた。 「いえ、そういうわけじゃないんですが」 「ワシなんかよ、十五歳で家を飛び出してそれっきりよ。あ、一度だけ帰ったかな。妹の結婚式に。 そんときゃ親戚一同からどやされてよ。何しに帰ってきやがった!よ。 オレは思ったね。これが血を分けたやつらの言うことかよ、とね。それっきりよ」 おっさん達が涙ぐんでいる。なんなんだ、この安いドラマみたいな展開は。 「んだんだ。遠くの親類より近くの隣人ってやつだぁ。 昔から言うべや、袖の触れ合うも多少の縁、てな」 「で、あんちゃん、親父と喧嘩でもしたんか?」酔っ払いは何度も同じ質問をする。 「いえ、実は人を探してまして」 「コレか」おっさんが小指を立てた。まわりがドッとはやし立てた。 「憎いわね、この色男っ」シナを作ってみせるおっさんたちに鳥肌が立った。 「で、どんな女よ?」だから違うって。 俺はポケットから長門の写真を取り出した。 「こっちの、髪の短いほうなんですが」 「どれどれ見せてみい。おおっ!えらくベッピンじゃねえかよ」 見せろ見せろと、おっさん達の間で写真の取り合いになった。 俺にはそれが女に餓えたケモノの群れのように見えた。頼むから破らないでくれよ。 サンちゃんと呼ばれたおっさんが俺の目をまっすぐに見つめて言う。 「あんちゃん。ワシは女を見る眼はないが、人を見る目はある。 この二人、どっちを選ぶかであんたの人生は大きく変わる」 このおっさんは神がかったことを言う。どっちを選ぶって、なにを選ぶんだ?。 もう歳も暮れ、寒風が吹き付ける大阪のガード下、電車が通るたびにガンガンと耳が鳴る一角で、 妙に若いホームレスが混じった酒宴が賑やかだった。 こっちの世界に来てはじめて何かの暖かさを感じた気がする。 おっさんたちの、酒臭い息にまじった苦労話を聞きながら俺はうんうんと生返事をした。 それからどうなったのか、記憶があやふやだ。 ただ、まわりの風景がぐるぐる回りだしたところまでは覚えている。 長門有希の憂鬱Ⅰプロローグ 長門有希の憂鬱Ⅰ一章 長門有希の憂鬱Ⅰ三章 長門有希の憂鬱Ⅰ四章 長門有希の憂鬱Ⅰおまけ
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/2400.html
autolink() SY/W08-090 カード名:エプロン姿の長門 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:1000 ソウル:1 特徴:《宇宙人》?・《本》? 【永】 他のあなたの《本》?のキャラすべてに、パワーを+500。 【起】[① あなたのキャラを2枚レストする]他のあなたの《本》のキャラが3枚以上なら、あなたは1枚引く。 これ、貸すから レアリティ:C illust.- 初出 ニュータイプ2006年8月号 リトバスEXのサイバー?美魚の互換カード。 《本》?シナジーと《本》?を条件としたドローブーストと、《本》?で固めたデッキタイプでは活躍できるキャラ。 《本》?シナジーに関しては応援とは違い場所を選ばずパンプが届くため使いやすく、 起動能力も優秀で、こいつとあと一人を寝かせてやるだけで1ドローできる。 使用条件があるが、《本》?で固めてしまえば簡単に発動できるだろう。 悔やむべきは、涼宮ハルヒの憂鬱では《本》?もちが少ないため、 森 園生同様に作品限定デッキではさほど役に立てないことか…
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/2095.html
autolink() SY/W08-T14 SY/W08-083 カード名:水着のハルヒ&長門 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:4500 ソウル:1 特徴:《団長》?・《宇宙人》? 【自】 このカードが手札から舞台に置かれた時か「チェンジ」で舞台に置かれた時、あなたは他の自分のキャラを1枚選び、そのターン中、次の能力を与える。『【自】このカードが舞台から控え室に置かれた時、あなたはこのカードをこのカードがいた枠にレストして置いてよい。』 TD:ハルヒ「みんな揃ってるわね」 U:ハルヒ「…そうね。まずは泳ぎね」 レアリティ:TD U illust.- 初出:メガミマガジン2006年9月号 2009/11/16 今日のカード 青ひげファーマシーをCIPで内包したキャラ。 カウンターとしての性能は失っているとは言え、パワー4500のキャラに付属というのは破格の性能と言える。 肝心の能力の使い方としては、主力キャラを対象として相手のカウンターなどへの対策とするほか、相討ち持ちやチャンプアタッカーを場に残しつつのフロントアタックに持っていける。 また、梧桐の姫君 美緒や負けず嫌い伊織のような場キャラを犠牲にする代わりに大幅なパンプ値を誇るCXシナジーを実質ノーデメリットで使用することも可能。 また、チェンジで登場すれば実質キャラ1体に『アンコール(①)』を与えることができる。 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 スイカを食べる長門 0/0 2000/1/0 青 チェンジ元